経済産業省および日本ロボット工業会は「令和5年度 ロボフレ事業報告会」を東京都内で開催し、総菜製造工程の自動化事例を紹介した。
経済産業省および日本ロボット工業会は2024年3月21日、「令和5年度 ロボフレ事業報告会」を東京都内で開催し、総菜製造工程の自動化事例を紹介した。
ロボフレとは、現場の業務プロセスや施設環境がロボットを導入しやすい“ロボットフレンドリー”な環境であることを意味する。少子高齢化の進展による人手不足が深刻化する中で、これまでロボットが導入されてこなかった領域で導入を促進していくためには、ロボットフレンドリーな環境の構築が不可欠だ。個別の現場に合わせていては開発コストがかさみ、横展開が広がらない。それぞれの現場を踏まえながら、できる限り汎用(はんよう)的なシステムにすることで、最小限のカスタマイズで導入コストを下げ、市場規模を広げることができる。
経済産業省では、「施設管理」「食品」「小売」「物流倉庫」の4分野において、ユーザーやロボットシステムインテグレーター(SIer)を交えてロボット導入環境の開発や標準化を進めてきた。その中で「食品」では日本惣菜協会の協力の下、総菜製造工程へのロボット導入を目指している。
近年、レストランなどで食事をする外食と、家庭で調理して食事をする内食に対して、スーパーなどで弁当や総菜を購入して自宅や職場で食事する中食の市場規模が拡大している。背景には少子高齢化や単身世帯の増加やコロナ禍による生活スタイルの変化がある。
経済産業省の「2020年 工業統計調査」によれば、産業別で従事者数が最も多かったのが、食料品製造業の約110万人だった。その中で、従業員あたりの付加価値額が低いのが総菜製造業と弁当など製造業だ。食料品製造業従事者の半数が総菜製造に携わっており、さらにその半数が盛り付け作業を行っているという。
「1番人手と時間がかかっているのが盛り付け作業だ。盛り付け作業は容器の供給、総菜の盛り付け、品位のチェック、蓋閉め、番重への移載といった工程で成り立っている。大変な作業で人がなかなか集まらず、多くは外国人を雇っているのが現状だ」。そのため自動化のニーズはあるが、高い重量精度が求められる一方で、対象が不定形で季節ごとに品目が変わるなど、採算性と技術的な課題が抱えていた。
そこで今回、開発したのが「総菜盛付全工程自動化統合ロボットシステム」だ。容器ソーターから供給された容器に、ロボットが総菜を盛り付け、同社のAI(人工知能)検査機による品位確認、ガス置換包装機による容器密封、不定貫のラベル貼り付けを経て、ロボットによって番重に移載される。コネクテッドロボティクスや寺岡精工、リスパックが協力し、マックスバリュ東海の長泉工場に導入された。ほうれん草のごま和えや白和え、ひじき煮、卯の花の盛り付けに使われており、実際に店頭販売もされている。1ラインに7人いた作業者は2.5人まで省人化できたという。
個々の重量精度の問題は従来の定貫(重量が均一)売りから不定貫売り(重量に応じた価格)に転換することで解決した。また、ガスを封入するガス置換包装により賞味期限の延長も実現している。
埼玉県や群馬県で店舗を展開するベルク向けに総菜を製造するホームデリカの工場では、触覚ハンドを用いた巻きずし盛り付けの自動化に挑戦した。
この触覚ハンドは東北大学 大学院情報科学研究科 助教でFingerVision 取締役の山口明彦氏が開発した、カメラをベースに触覚を再現する視触覚センサーを用いている。シリコン製の透明で柔らかいハンドには黒点が埋め込まれており、モノを挟んだ時の黒点の動きを内蔵のカメラで捉えることで、外力や滑りの分布などを画像処理によって触覚に変換してロボットを制御する。
FingerVision 代表取締役の濃野友紀氏は「カメラの映像を活用してモノをつかんだ時の手触りや滑り落ちる感覚を取り出している」と語る。例えば、ワークを持ち上げた時に把持する力が弱いためワークの滑りが起こると、その時の黒点の変化を視触覚センサーで捉えてつかみ直す(把持する力を強める)といったことが可能になる。
ただ、巻きずしに関しては「落とさないように強く持つとノリがきれいにはがれなくなったり、逆に弱く持つと中の具材が落ちてしまったりするため、難しい力の制御が求められる」(濃野氏)。
今回、FingerVisionでは、巻きずしのカットから供給そして盛り付けまでを行うシステムを構築した。盛り付けでは、平置きと斜め置きを行っている。流れてくるトレイの位置や巻きずしの置き場所はカメラで認識している。食材を扱うため、ハンド部分はシリコン製のカバーを装着しており、カバーは丸洗いできるようになっている。「非常に汎用性の高い技術になっており、どういった具材にも対応できる。全ての弁当食材の盛り付けを実現したい」(濃野氏)。
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