デジタルツインを実現するCAEの真価

Simulation Governanceの活用カテゴリー「管理の仕組み」の診断結果シミュレーションを制する極意 〜Simulation Governanceの集大成〜(9)(4/4 ページ)

» 2024年03月27日 09時00分 公開
[工藤啓治MONOist]
前のページへ 1|2|3|4       

SPDMが浸透していない背景、理由とは?

 さて、SPDM技術が浸透していない背景、理由は何だと思いますか? 筆者の見立てでは、ずばり、日本におけるIT導入の理由がいまだに製品(機能と性能)とソリューションという見えやすい短期的成果を目的にする傾向があり、“変革”という痛みを伴う中長期的な成果に対して目が向いていないことにあると考えています。分かりやすく説明すると、SPDMを導入したからといって、すぐに製品が良くなったり、開発期間が短縮されたり、手戻りがなくなったりするわけではないからです。

 しかも、SPDMを活用するためには、データを管理する仕方を考えたり、標準化や自動化を進めたり、テンプレートを開発したりとそれ相応の手間が掛かりますから、短期的なROI(Return On Investment:投資利益率)でしか見ていない場合、効果を説得できないと考えるからです。

 しかし、少し中長期で考えれば、手間を掛けただけの成果が着実に長期的に出るのです。製品を買って得られる即効的効果を期待するのか、あるいは中長期投資で大きな積立成果を期待するのかによって、プロジェクトの目的やコンセプト、スケジュール、さらには予算や体制も、全てが異なってきます。

 先ほど日本でデジタル化が進んでいないという現状を述べましたが、こうしたシミュレーションの世界でも、その証左が見えてしまうのはとても残念なことです。ただ、逆に考えると、われわれのようなIT屋にとっては、まだまだ仕事が残っているといえますし、こうして記事を執筆し、啓蒙(けいもう)する価値も十分にあると捉えることができます。

今回のまとめ

 今回の管理の仕組みに関連して、毎度参照している「デザインとシミュレーションを語る」ブログの該当する箇所は下記の通りです。あらためてお読みいただけると、さらに理解が深まることと思います。SPDMはキーとなる技術であり、さらに筆者の専門領域であるため、多くの関連リストがあります。

 Simulation Governance診断にご興味のある方は、本連載を読んだ旨をコメントいただき、筆者プロフィール欄に記載のメールアドレスまでご連絡ください。 (次回へ続く

⇒連載バックナンバーはこちら

本記事に関するアンケートにご協力ください

 最後に筆者からのお願いです。本稿をご覧いただいた読者の皆さまからのフィードバックをいただけると大変励みになります。また、ご意見やご要望を今後の記事に反映させたいと考えております。無記名での簡単なアンケートになりますのでぜひご協力ください。

⇒アンケートはこちら

筆者プロフィール:

工藤 啓治(くどう けいじ)

スーパーコンピュータのクレイ・リサーチ・ジャパン株式会社や最適設計ソフトウェアのエンジニアス・ジャパン株式会社などを経て、2024年1月まで、ダッソー・システムズに所属。現在、個人コンサルタントとして業務委託に従事。40年間にわたるエンジニアリングシミュレーション(もしくは、CAE:Computer Aided Engineering)領域における豊富な知見やノウハウに加え、ハードウェア/ソフトウェアから業務活用・改革に至るまでの幅広く統合的な知識と経験を有する。CAEを設計に活用するための手法と仕組み化を追求し、Simulation Governanceの啓蒙(けいもう)と確立に邁進(まいしん)している。


  • 学会活動:
    2006年から5年間、大阪大学 先端科学・イノベーション研究センター客員教授に就任し、「SDSI(System Design & System Integration) Cubic model」を考案し、日本学術振興会 第177委員会の主要成果物となる。その他、計算工学会、機械学会への論文多数
  • 情報発信:
    ダッソー・システムズ公式ブログ「デザインとシミュレーションを語る

筆者とのコンタクトを希望される方へ:
件名に「Simulation Governanceについて」と記載の上、info@engineous-consulting.comまで直接メールご連絡をお願いします。


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.