デジタルツインを実現するCAEの真価

Simulation Governanceの活用カテゴリー「管理の仕組み」の診断結果シミュレーションを制する極意 〜Simulation Governanceの集大成〜(9)(2/4 ページ)

» 2024年03月27日 09時00分 公開
[工藤啓治MONOist]

活用カテゴリーの「管理の仕組み」に着目

 それでは、本題の管理の仕組みに関する詳細に入る前に、9つのサブカテゴリー全体の傾向をあらためて振り返ってみましょう。

9つのサブカテゴリー全体の傾向 図3 9つのサブカテゴリー全体の傾向[クリックで拡大]

 9つのサブカテゴリーの中で、今回の管理の仕組みが、唯一「2.0」を下回る「1.83」という平均値であることに着目せざるを得ません。その内訳は表1とヒストグラム(図4)の通りです。結論は簡単で、一言で言えば「SPDM技術が浸透していない」ということになります。その理由については、本稿の最後で議論することにして、これまでと同様に、まずはこのサブカテゴリーを構成する4項目について見ていきます。

「管理の仕組み」の診断結果平均、標準偏差、最大 表1 「管理の仕組み」の診断結果平均、標準偏差、最大[クリックで拡大]
「管理の仕組み」の診断結果ヒストグラム 図4 「管理の仕組み」の診断結果ヒストグラム[クリックで拡大]

C10「解析と実験データ管理」

 C10解析と実験データ管理」は、図1で示したSPDMのデータ管理系に位置し、設計性能を予測する解析データと、検証する実験データをひも付けて管理することであり、B3精度保証と向上」、B4実験との関係」や、この後に登場するC12要求管理とシミュレーション連携」を実施するための基盤でもあります。

 “CAE解析のモデルやデータ、実験データをどのように管理していますか?”との設問に対して、最も多い回答は、Level 2:“共有フォルダや個別DB(データベース)を利用し、利用者の裁量で更新されている”となっています。冒頭のリスト1で示した課題がいまだに現実であることを示しています。つまり、C10の現状が低いということは、B3B4C12のレベルも上がらないということになります。また、組織として、解析部門と実験部門が別々で連携が取れていないという組織課題にもつながっています。

C11「ワークフローテンプレート」

 C11ワークフローテンプレート」は、図1で示したSPDMのプロセス管理系に位置します。“CAEを実行する手順を実行可能なワークフローとして利用していますか?”との設問に対して、Level 1:“各担当者が手作業で実施している”と、Level 2:“各担当者がスクリプトやバッチ機能を利用して、個別に自動化している”が大半を占める結果となっています。ここだけ見ると驚かれるかもしれませんが、実のところワークフローを作成するには、前提としてB2モデル化技術」が標準化され、B7手順が標準化」され、C6自動化プロセス」が実現されていなければなりません。ただ、これまで見てきたように、これらの実現レベルが低かったことは既に分かっていたので、総合技術であるワークフロー化の現状が低いのは当然の帰結ではあるのです。

 これまでの報告内容を真剣に読まれた方であれば、C6自動化プロセス」とどこが違うのか? という疑問を持たれるかもしれません。当然と思いますので、補足説明いたします。

 C6では、自動化プロセスを完成させることに主眼を置いているのに対し、C11ワークフローテンプレート」では、それをテンプレート化して管理/運用するというレベルに踏み込んでいるのです。Level 5を参考に引用すると、“テンプレート化され、最新の仕組みになるように統一的に管理/運用されている”状態になっており、SPDMというプラットフォームを用いた組織的な運用を想定しています。そのため、C11ワークフローテンプレート」は、C6自動化プロセス」の完成形であると捉えることができます。

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