フランスの電子棚札大手であるVusionGroup(ヴジョングループ)。同社は2024年1月にSES-imagotagから社名を変更したがその狙いは何か。日本を含めた欧州域外への事業展開なども含めて、VusionGroup APAC エグゼクティブバイスプレジデントのパスカル・ジェルベール・ガイヤール氏に話を聞いた。
製造業をはじめデジタル化の波はさまざまな産業に広がっているが、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど日々の買い物で利用している小売り店舗も例外ではない。ユーザーとしてセルフレジや電子マネーの利便性を実感することでそういった「スマートリテール」を実感する機会は確実に増えている。
スマートリテールの分野では、商品の値段を表示する棚札も、印刷した紙や手書きから電子ペーパーを用いた電子棚札への移行が進んでいる。この電子棚札のグローバルリーダーとして知られているのがフランスのVusionGroup(ヴジョングループ)だ。2023年末までSES-imagotag(エスイーエス・イマゴタグ)として知られていた同社だが、2024年1月にグローバルで社名を変更し、2023年4月に設立を発表した日本法人の名称も「ヴジョングループ株式会社」に変えている。
VusionGroup APAC(アジア太平洋地域) エグゼクティブバイスプレジデントのパスカル・ジェルベール・ガイヤール(Pascal Gerbert Gaillard)氏に、VusionGroupへの社名変更の狙いや欧州域外への事業展開などについて聞いた。
SES-imagotagの社名で電子棚札を中核に事業を展開してきたVusionGroupは、欧州における小売り店舗のデジタル化に合わせて大きく成長を遂げてきた。直近10年間の売上高年平均成長率は約30%で、2023年の売上高は8億ユーロとなっている。
現時点での売上高の比率を見れば、事業別で電子棚札が90%、地域別で欧州が75%となっており“欧州の電子棚札大手”というイメージが強い。しかし、近年の成長を強くけん引しているのは、ハードウェアである電子棚札の3倍以上の成長になっているという、小売り店舗のデジタル化に貢献するデジタルソリューション事業だ。同社では、電子棚札の情報を管理するサーバなどのシステムをオンプレミスで提供していたが、2020年ごろからクラウドベースのIoT(モノのインターネット)管理プラットフォームである「VUSION Cloud」「VUSION OS」の提案に切り替えた。ジェルベール・ガイヤール氏は「今後当社がこのクラウドファーストアプローチを推進することを伝えるため、中核製品の名称に用いているVUSIONを新たな社名に採用した」と説明する。
実際に、VusionGroupが展開する事業ブランドは、電子棚札事業のブランド名は元の社名であるSES-imagotagを採用しつつも、その他はVUSION CloudやVUSION OSと同様のデジタルソリューションが多数を占めている。例えば、小型カメラデバイスとAI(人工知能)技術で商品棚の情報を分析する「captana」、カラー電子ペーパーを使って価格情報に加えて店舗内での広告展開も可能にする「engage」、電子棚札やカメラ、カラー電子ペーパーなどのIoTデバイスや店舗のデータを基に分析を行うデータアナリティクスプラットフォーム「memory」などを展開している。さらに、産業&物流向けIoTソリューションを展開する「PDi digital」もある。「小売り店舗のバックヤードと関連する事業だが、薬局における消費期限管理や工場の倉庫管理などにも利用可能なことから、小売り店舗向けに限定せずに展開している」(ジェルベール・ガイヤール氏)。
“欧州の電子棚札大手”の地位にとどまらず積極的に事業展開を拡大していることから、欧州に上場するテクノロジー企業の中で、5年間の収益成長率トップ、時価総額成長率トップという評価も得ている。フランスを代表するグローバルの小売りチェーンであるカルフール(Carrefour)に採用されるなど、欧州の小売り業界における存在感は大きい。
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