VusionGroupが足元で事業展開を強化しているのが北米市場だ。2022年3月に、世界トップの小売り業者であるウォルマート(Walmart)との間で、電子棚札やカメラ、センサーなど、VusionGroupのさまざまなソリューションを統合した次世代デジタルシェルフシステムの開発に向けた戦略的提携を発表しており、今後ウォルマートにおける同システムの導入が広がっていくことに併せて売上高のさらなる成長が期待できるとともに、2023年時点で18%の北米における地域別売上高比率も高まっていくことになる。
ウォルマート向けにとどまらず、各事業ブランドで展開するリテールIoTソリューションを拡充していくには研究開発も強化する必要がある。フランスのナンテールを中核に進める研究開発の人員は260人以上で、全従業員の30%以上を占める。その構成比率も、現時点での売上高のほとんどを占める電子棚札の人員は19%程度であり、残りがクラウドファーストアプローチによるソリューション開発が占める。
VusionGroupとしての2027年の事業目標は、売上高が2023年比2.75倍の22億ユーロで、直近10年間の年平均成長率30%を維持していきたい考えだ。また、2027年時点で、北米市場の地域別売上高比率は40%以上、非電子棚札事業の売上高は全体の約30%に当たる6億5000万ユーロを想定している。
それでは、日本を含めたAPAC市場についてはどのような事業展開を進めていく方針なのだろうか。ジェルベール・ガイヤール氏は「北米市場の次にスマートリテールの大きな波が来るのは日本を含めたAPAC市場だと考えている。VusionGroupとして、2027年以降も高い成長を実現していくためにも、現時点からしっかりと電子棚札にとどまらないリテールIoTソリューションの提案を進めるとともに、エコシステムパートナーの拡充にも努めていきたい」と強調する。
2020年から全世界に影響を与えたコロナ禍によって、実店舗のデジタル化に向けたスマートリテールの取り組みは立ち止まらざるを得ない状況に追い込まれた。しかし、コロナ禍を経て北米市場ではインフレによる賃金上昇が顕著となるのと合わせて、小売り店舗の効率化に向けたデジタル化の取り組みは一気に加速している。同氏は「このトレンドは日本市場でも起こっており、大手のリテーラーがプラットフォーム立ち上げの検討を進めている。当社への問い合わせも多くなっている。賃金上昇と絡めると人件費対策に見えるかもしれないが、狙いはそれだけにとどまらないはずだ。より大きな枠組みで貢献できるように、当社の体制をしっかり整えていきたい」と述べている。
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