NVIDIAの日本法人であるエヌビディアが小売業におけるAIの活用動向について説明。小売業でのAI活用は導入コストが大きな課題になっていたが、2022年に入ってからいわゆるPoC(概念実証)の壁を超える事例が生まれつつあるという。
NVIDIAの日本法人であるエヌビディアは2023年2月21日、オンラインで会見を開き、小売業におけるAI(人工知能)の活用動向について説明した。1店舗当たりの利益率が低い小売業でのAI導入は導入コストが大きな課題になっていたが、2022年に入ってからいわゆるPoC(概念実証)の壁を超える事例が生まれつつあるという。
エヌビディア エンタープライズ事業本部 リテール担当 ビジネスデベロップメントマネージャーの中根正雄氏は「小売業におけるAIへの期待は大きい。グローバルの市場規模も、2018年の38億米ドルから2028年には6倍以上となる241億米ドルに拡大するという調査結果もある」と語る。
GPU技術をベースにAI関連ハードウェアのトップサプライヤーとして知られるNVIDIAだが、その強さはハードウェアだけでなく「CUDA」に代表されるプラットフォームソフトウェアに加え、AIをさまざまな用途への展開を推進するアプリケーションフレームワークによって裏打ちされている。小売業については、専用のアプリケーションフレームワークがあるわけではないが、ビデオ分析の「METROPOLIS」、データサイエンスの「RAPIDS」、シミュレーションとデジタルツインの「OMNIVERSE」、ロボティクスの「ISAAC」、対話型AIの「RIVA」、レコメンダーの「MERLIN」などが活用されている。顧客も、ウォルマート(Walmart)やクローガー(Kroger)、ドミノピザ(Domino's)など北米の大手企業が名を連ね、多くのSIerやソフトウェアベンダーとも協業関係にある。
中根氏は小売業におけるAI活用分野のトップ4として「インテリジェントストア」「インテリジェントQSR(クイックサービスレストラン)」「インテリジェントサプライチェーン」「オムニチャネルマネジメント」を挙げた。
インテリジェントストアでは、カメラによる映像分析が重要な役割を担っており、これにデジタルツインを組み合わせることもある。また、インテリジェントQSRは、ファストフードチェーン向けのインテリジェントストアの位置付けで、顧客の注文手順のスマート化や店舗内における顧客行動の分析に加え、需要予測や在庫管理などの組み合わせを指す。
インテリジェントストア関連で、北米市場での引き合いが強いのが、セルフレジでのスキャンミスや万引きの防止といった資産保護のAIソリューションだ。例えばクローガーは、エバーシーン(Everseen)との提携で、セルフレジと有人レジの監視を2300の店舗全てで実施しており成果を得ているという。
また、NVIDIAはインテリジェントストア向けのベースとなるサービス群として、2023年1月に「RETAIL AI WORKFLOW」を発表しているが、この中でもスキャンミスや万引きの防止向けの「RETAIL LOSS PREVENTION AI WORKFLOW」の引き合いが強いという。「これまで日本国内では大きな問題になっていなかったが、今後セルフレジの普及が進めば需要は高まって来るだろう」(中根氏)。
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