生成AIを第2のWindowsにしたいマイクロソフト、Copilotパートナーを拡大製造マネジメント インタビュー(1/3 ページ)

マイクロソフトは「Microsoft AI Tour-Tokyo」を開催した。本稿では、マイクロソフト エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフマーケティングオフィサーの沼本健氏の基調講演と、その後に行われたメディアラウンドテーブルの内容を紹介する。

» 2024年02月28日 07時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 米国Microsoft(マイクロソフト)は2024年2月20日、都内で「Microsoft AI Tour-Tokyo」を開催した。本稿では、マイクロソフト エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフマーケティングオフィサーの沼本健氏の基調講演と、その後に行われたメディアラウンドテーブルの内容を紹介する。

2024年は生成AIを語るだけから脱しフル活用する年に

 「Microsoft AI Tour」はマイクロソフトがAIによるビジネス変革をテーマに、経営者や開発者を集め、全世界の13都市で開催しているイベントだ。日本での開催は初だという。基調講演では沼本氏が「AIトランスフォーメーションと変革を推進するMicrosoft Cloud」をテーマとし、生成AIを取り舞く環境の変化と、マイクロソフトのさまざまな取り組みについて紹介した。

photo 基調講演を行うマイクロソフト エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフマーケティングオフィサーの沼本健氏

 マイクロソフトではAIによるビジネス変革(AIトランスフォーメーション)の機会として「従業員体験の充実」「顧客エンゲージメントの改革」「ビジネスプロセスの再構築」「イノベーションのカーブを曲げる」の4つを挙げ、さまざまな技術開発や、ソリューション、サービスの展開を進めてきている。

 沼本氏は「AIによるビジネス変革は未来の話ではなく今既に起こっていることだ。2024年は生成AIについて語る時代から導入してフル活用していく年になる。IDCの調査でも『企業がAIに1ドル投資するごとに平均3.5ドルのリターンがある』という結果なども出ており、大きなインパクトを生み出している」と訴える。

 マイクロソフトは、「Microsoft Cloud」の6つのソリューションエリアにおいてAI技術の実装を進めているが、それぞれの領域で「Microsoft Copilot(以下、Copilot)」の実装を進めている。Copilotは業務アプリケーションに生成AIなどを含むAI支援機能を組み込んだサービスだ。業務に直結した形で生成AIの機能を活用できることが特徴だ。

 さらに、これらのAI機能についても、さまざまなAIプラットフォームとパートナーエコシステムを構築し、豊富なAI関連機能の取り込みを進めている。AIサービスを提供するユーザー企業とも共創をベースとしたパートナーシップを構築し、共同イノベーションを推進。AIを技術の核としつつ、得られた価値をさらに第三者に広げる取り組みなども含め幅広い取り組みを進めている。

photo AIトランスフォーメーションの実現に向けてマイクロソフトで取り組んでいること[クリックで拡大] 出所:マイクロソフト

ホンダ「生成AIを早く使うことが競争面で重要だ」

 実際に、Copilotは先行ユーザーなどを中心に大きな成果を生み出している。成果として、情報検索に費やす時間の75%短縮や、日常的な煩雑作業の71%削減など、週平均で1.2時間の作業時間削減に貢献したという。また、英語による会議でCopilotを使用したまとめの精度は97%に達しているとし、欠席した会議のキャッチアップの迅速化に貢献。その他、カスタマーサービスやセールス、ソフトウェア開発者、ナレッジワーカーなどの業務別のユースケースも増えており、どの従業員、どの業界でも使用が拡大している。「Copilotの先行ユーザーの77%がもう手放せないとしており『(福利厚生面で)昼食を無料にするくらいなら、Copilotを導入してほしい』とする声もあった」と沼本氏は説明する。

photo Copilotの業務別での活用[クリックで拡大] 出所:マイクロソフト

 Copilotの先行ユーザーの1社として登壇した本田技研工業(ホンダ) 執行職 デジタル統括部長の河合泰郎氏は「自動車業界が100年に1度の変革期を迎える中、ホンダでは『第二の創業』と位置付けた取り組みを進めている。これまでプロセス改革やシステムの刷新などを進めてきたが日々の業務変革を加速できれば大きなインパクトを生む。その大きな武器になるのが生成AIだと考えている。生成AIはいきなり民主化され技術的ハードルも低い。早く使い、使いこなせるようにするのが競争面で負けないためにも重要になる」とその価値について語る。

photo ホンダ 執行職 デジタル統括部長の河合泰郎氏

 ホンダでは「Copilot for Microsoft 365」を使用しているが、生成AIを主に3つのレイヤーで定義して活用できるように整備を進めている。1つ目が、汎用的なLLM(大規模言語モデル)の一般的な利用である「一般常識を高いレベルで知能化したレイヤー」だ。2つ目がホンダの業務情報を活用した「ホンダの中で出てきた情報や知識を知能化したレイヤー」だ。そして、3つ目が「専門家の情報を意図を持って知能化するレイヤー」である。

 河合氏は「使ってみると2番目の業務情報を活用するというレイヤーでかなりのことが行えることが分かってきた」と実感について語る。ホンダでは日常業務のデータは以前から使用していたMicrosoft 365上のさまざまなアプリケーションにひも付く形で残せていたが、データ管理は人任せで誰でも使用できる形ではなかった。しかし、これをCopilotにより壁を越えて利用できるようになったという。

 また、データを利用するにはセキュリティやプライバシーの問題も大きいが、Copilotは一人一人の個人データに基づくAI支援機能であるため、学習用のデータの利用範囲もその個人の権限でアクセスできる範囲に限定でき、それぞれの情報レベルで最適なAI支援を受けられるようになる。「一人一人の日常業務を効率化することで大きな価値を生み出すことができそうだ」と可合氏は語っている。

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