生成AIを第2のWindowsにしたいマイクロソフト、Copilotパートナーを拡大製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)

» 2024年02月28日 07時30分 公開
[三島一孝MONOist]
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シーメンスとの提携で生成AIをモノづくりにも活用

 ここからは、沼本氏に対するメディアラウンドテーブルの内容を一問一答形式でお伝えする。

―― 業務改善で実際に活用されている生成AIの使い方について先進的な取り組みとしてはどういうものがあるか。

photo 「Copilotをいかに“慣習”にしてしまえるかがポイント」と語る沼本氏

沼本氏 アプリケーションのパターンとして人気なのは、検索拡張生成(RAG)とされる領域のもので、LLMで応答を生成する前に信頼できる知識ベースを参照して、特定の分野や業務に最適化した回答などを生成するという仕組みだ。業務用データを引っ張ってきてLLMに投げて回答することで、業務内容に合致したより妥当性の高い回答内容を生成することができる。一から業務データを使って学習させると負担が大きくなるが、その負担を抑えた形でより活用効果を高めることができる。

―― 製造業の生成AIの使い方で興味深いと考える事例あるか

沼本氏 思いつくのは2023年10月に発表したドイツのSiemens(シーメンス)との取り組みだ。共同でシーメンスが展開しているさまざまな産業用ソフトウェアに対して、生成AI搭載型アシスタント「Siemens Industrial Copilot」を導入し、モノづくりの支援を強化する。具体的には、複雑なオートメーション用コードの迅速な生成、最適化、デバッグが可能になり、シミュレーション時間を大幅に削減することなどが期待されている。

 また、シーメンスが展開している製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェア「Siemens Teamcenter」とコラボレーションツール「Microsoft Teams」との連携を強化し、複数の業務部門を横断した、設計エンジニア、現場作業員、その他チームのバーチャルコラボレーションを簡単に行えるようにしている。こうした製造業ならではのデータについてもCopilotでアクセスしやすくなる点が非常に興味深いと考えている。

―― シーメンスの例もそうだが、Copilotのパートナーとして、業界特化型のプラットフォーマーと積極的にパートナーシップを構築しているように見えるが、戦略的に進めているのか。

沼本氏 特にそういうパートナーのみに注力しているというわけではなく、どちらかというとエンドユーザー側の要望に応えようとした結果、そういう業界特化型のプラットフォーマーとのパートナーシップが増えているという形だ。より多くのエンドユーザーの希望に応えようとすると、マーケットシェアが高い業務アプリケーションのプラットフォーマーと組まざるを得ないので、結果的にそうなっている。

 今後もこの姿勢は変わらず、エンドユーザーに対するインパクトが大きく、より多くの企業で生成AIなどテクノロジーを使ってもらうことを重視してパートナーシップを広げていく。

Copilotをいかに“慣習”にしてしまえるか

―― 先行ユーザーの77%が手放したくないとした回答を示していたが、そうではない23%はどういう理由で「手放してもいい」となっているのか。

沼本氏 基本的にはツールの使用頻度に依存していると見ている。私自身も既に手放せない状況になっているが、日常的に高い頻度でツールを使う人はCopilotにおいて利便性が高まればうれしい。ただ、それほどツールに触れない人にとっては、その機能が強化されたとしてもそれほど恩恵を感じない。そこに違いが表れていると考えている。

―― 半年前には「先行したAIの勢いをどれだけ維持加速するか」がポイントだと語っていた。今はどういうところがポイントだと考えているか。

沼本氏 Copilotの定着をどれだけのスピードで実現できるかがポイントだと考えている。Copilotは業務でもプライベートでもどちらでも使える存在で、マイクロソフトでいえば、Windowsに近い存在だ。Windowsは定着しある種“慣習”の一部になった。同じようにCopilotも“慣習”にいかに早くできるかが重要だ。幸いにも、マイクロソフト内で商業的に成功したMicrosoft 365よりも早いペースでCopilotは有償版の普及が進んでいる。これをさらに加速させていきたい。

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