米国Microsoftは、兵庫県神戸市に世界で6つ目、国内では初となるAIについての共創拠点「Microsoft AI Co-Innovation Lab」を開設したことを発表した。
米国Microsoftは2023年10月11日、兵庫県神戸市に世界で6つ目、国内では初となるAI(人工知能)についての共創拠点「Microsoft AI Co-Innovation Lab」を開設したことを発表した。
Microsoft AI Co-Innovation Labは、Microsoftの選任エキスパートが常駐し、パートナー企業がAIを活用した製品やソリューション作りの支援を行う施設だ。2017年に米国のレドモンドに最初に設立してから、米国のサンフランシスコ、ウルグアイのモンテビデオ、ドイツのミュンヘン、中国の上海など5拠点で展開してきた。そして6つ目の拠点として日本の神戸に設立されることになった。
日本の中でも神戸に新たなAI拠点を設立した理由として、Microsoft AI Co-Innovation labsを統括するMicrosoftの山崎隼氏(※)は「Microsoftとしてアジアにもう1つの拠点が必要だと考えていた。アジアではすでに上海に拠点があるが、中国にあるためMicrosoftのクラウドサービスなどが全て使えるわけではない。そこでグローバルサービスがそのまま使える日本に拠点を立てることを考えた。神戸に拠点を作ったのは、神戸市からの誘致があったことと、既に産業用メタバースで協業している川崎重工業があったこと、また医療関係の企業などが多く集積していることから、多様なユースケース構築ができると考えたことなどが理由だ」と述べている。
(※)山崎隼氏の「崎」は、正しくは“立に可”(たつさき)となる
Microsoft AI Co-Innovation Labは、基本的にはAIを活用して実現したい製品やソリューションのアイデアを持つ企業がエンジニアを派遣し、Microsoftのエンジニアと一緒に具体的な課題を1週間単位でクリアしていくプログラムとなっている。AIやIoT(モノのインターネット)を活用した製品やソリューションを開発するためには、どういうツールでどういう形でデータを扱うべきかなど、製品づくりに進む前段階で膨大な時間が必要になるケースも多いが「こうした時間を大幅に低減する」と山崎氏は語る。
ただ、限られた時間で確実に成果を出すために、Microsoft AI Co-Innovation Labの利用企業には、明確な目的が必要になる。また、エンジニアを派遣し期間中は共創業務に専念することが条件となっている。こうした条件を満たせば、Microsoftに対して支払う費用は無いという。「将来的な製品化が進んだ際にMicrosoftの製品を使っていただけるようになれば、Microsoftにとってはメリットがある。さらに、多彩なユースケースを収集できる機会になるのも大きい」と山崎氏は語っている。
参加企業はまずWebサイトから申し込みを行い、審査と承認を受けた後、目的や各Sprint(アジャイル開発における短期間の開発単位)で何をやるのか明確化する。その後、1週間のSprint期間で実際の共創を行い、製品やシステム開発を行う。1つのプログラムで申し込みから開発の完了まで合わせて約1カ月となっているという。神戸のMicrosoft AI Co-Innovation Labでは、Sprintを同時に2つ回す体制となっており、1カ月で8社を同時進行できるとしている。また、神戸市や川崎重工業が参加する一般社団法人が運営企業として参加企業の支援を行い、エンジニアが用意できない中小企業などにエンジニアを紹介したり、一緒にサポートに入ったりするという。
山崎氏は新拠点での目標として「より多くの企業を招き、多様なユースケースを作り上げていきたい。また神戸だけでなく、日本や他のアジア地域にまたがるAI拠点としていく」と抱負を述べている。
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