3社目は、フランスのnamiだ。その社名は、Wi-Fiの電波(Wave=波)に由来するという。Wi-Fiの電波を使用したセンシングで人の動きや心拍などを検知するサービスを提供する。Wi-Fi電波を利用して人の位置や動きを検知する技術は以前から存在するが、環境によって精度が落ちるという課題もあった。しかし、namiの技術はこれまでの他の企業や技術よりも高精度だという。
人の動きを検知し、照明や空調、セキュリティシステムの自動化、高齢者の見守りなどに広く利用できる可能性がある。米国最大のスマートセキュリティサービスである「Alarm.com」もnamiのセンサーを採用しているということで信頼性も高い。もちろんデバイスはMatterにも対応済みだ。
CES 2024で紹介されていた注目技術の一つとしてUWB(Ultra Wide Band)を紹介したい。
UWBを搭載したデバイスは、その位置や方向性をかなりの精度で正確に把握することができるため、今後この技術を使って人の動きに応じてデバイスをコントロールするなどスマートホーム領域での応用も期待できる。
これまでのスマートロックで主流だったBluetoothを使用したハンズフリー開錠は、家の中にいるだけで鍵が開いてしまうケースもあり、セキュリティの問題が指摘されていた。一方でUWBは、動くものの方向も特定できるため、より安全なハンズフリー対応が可能となる。日本企業では大崎電気の「OPELOII」などUWBを搭載したスマートロックの販売も開始されている。今後UWBを搭載したスマートホームデバイスは増えていくかもしれない。
今回のCES 2024では、Matter対応が当たり前になり、Readyな状態になっていることを実感することができた。そして、トイレや調理器具、マッサージ機など家中のさまざまな製品がスマート化され“スマートホーム”という概念が拡大していく流れを感じた。この流れは加速すると思われるので、今後はデバイス一元管理の重要性がよりいっそう増してくるだろう。
2024年以降は、さらに「ソリューション」提供がトレンドになってくると思われる。ほとんどのブースでスマートホームデバイスのセキュリティ活用が提案されており、今後エネルギー管理やペットケアなど、幅広くさまざまなソリューションが展開されていくだろう。これはスマートホームが単なる「家」から「生活のパートナー」へと進化していくことを意味している。家の機能が進化し、人々の暮らしが心地よいものに変化していく。この流れを今後も注視し、われわれアクセルラボも日本においてその進化の一端を担っていきたい。
青木 継孝(あおき つぐたか) 株式会社アクセルラボ 取締役/CTO
1976年生まれ。大学卒業後、ITエンジニアとして音楽配信サービスのシステムディレクションを担当。2015年、国内のスマートホーム事業ベンチャーに転身。スマートロックプロダクトをゼロから立ち上げ、大手不動産会社への標準導入を実現。2018年、アクセルラボに参画。サービス開発及び企画・推進グループ担当役員としてスマートホームサービス全般をプロデュース。
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