連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」では、「オリジナルの製品を作りたい」「斬新なアイデアを形にしたい」と考え、製品化を目指す際に、絶対に押さえておかなければならないポイントを解説する。連載第7回は「設計品質」と「量産品質」の違いについて取り上げる。
前回、“中国人はなぜ「Made in Japan」の製品を爆買いするのか”をお伝えした。一般的に、外国人が「Made in Japan」を高く評価する理由として、次の2つが考えられる。
1つは、良い設計としっかりとした検証を行っているという評価だ。10万キロ以上走っても日本車のエンジンが全く壊れないのはその好例である。設計者が優れたエンジンの設計を行い、10万キロ以上走っても壊れないことを検証しているのだ。
もう1つは、バラツキの小さい部品を用いて、バラツキを極力小さくして製品を組み立てているという評価だ。
筆者が中国に赴任したばかりのころ、中国人の友人と安価な覚まし時計を買いに行ったときのことだ。山積みになっていた時計の箱を1つ手に取り、そのままレジに持って行こうとした筆者に対し、その友人は「小田さん、中を開けて動くの確かめて!」と呼び止めた。そして、その友人は5つほど箱を取り、目覚まし時計を取り出して、一つずつ順番に電池を入れて動くかどうかを確かめ始めたのだ。しばらく待っていると、「小田さん、これ大丈夫!」と言い、友人はその中の1つを筆者に手渡してくれた。つまり、動かない目覚まし時計があるかもしれないということだ。
ここで示した10万キロ以上走ってもエンジンが壊れない自動車の品質のことを「設計品質」といい、動く/動かないのバラツキがある時計の品質のことを「量産品質」という。
設計者は、次の事項を念頭に置いて設計を行っている。
「1)安全性」はユーザーに危害を加えないこと、「2)信頼性」は壊れにくいこと、「3)製品/部品の製造性」は正しく作りやすいことである。残りの4)〜6)は文字通りに理解してほしい。
設計者は、これら全ての事項に対して目標を掲げ、その達成を目指して設計を進める。ちなみに、一般的には1)〜3)を品質ということが多い。なお、製造性については以降から“製品の製造性”に関してのみ言及する。
製造性は、設計者だけでは対応し切れない場合があるため、設計者と製品の組立メーカーの製造技術者が協力して対応する。対応する内容については、前回の内容を参照してほしい。
製造技術者が対応する製造性の良しあしを量産品質という。製造技術者は、製品を正しく作りやすい製造工程にするのだ。
製品を正しく作りやすくするには、主に次の3点が重要だ。
QC工程表は、製品を作る順番である。例えば、2つの板金がビス1本で固定されている場合、図3のようになる。
通常であれば、このような簡単な作業は1人で行うが、ここでは説明を分かりやすくするために、各工程を1人ずつが作業することとした。図3右がQC工程表であり、図3左は作業標準書に描かれる図である。治具は、ビス留めするときに板金Aが回転しないようにするためのものだ。
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