その合成に向けて、まず、PBSとPA4のブロック構造を合成しました。PBSブロックは、モノマー原料である「1、4-ブタンジオール」と「コハク酸」とを縮重合した後、アミノブタン酸を結合させることにより、両末端にアミノ基(-NH2)を導入したものを合成しました。
PA4ブロックは、開始剤(INIT)を別途合成した後に、「2-ピロリドン」をモノマー原料として開環重合することによって合成し、両末端にカルボキシ基(-COOH)を持つブロックを得ることができました。いずれのブロックの合成についても、モノマー原料の添加量を調整することで、ブロックサイズ(重合度(m、n))をある程度コントロールできることが分かり、それぞれ短、中、長の3種類のサイズを持つブロックを合成しました。
次いで、共重合化を行いました。PBSブロックが持つアミノ基と、PA4ブロックが持つカルボキシ基をうまく反応させると、アミド結合(-NHOC-)という化学結合を作るため、両者を連結させることができます。
両末端でこの反応が起きるため、おのずと二種類のブロックが交互に配置した共重合体、PBS-mb-PA4を形成させることができます。先ほど合成した、PBS、PA4ブロックそれぞれの3種類の中から1つずつ取り上げて、アミド結合形成反応を行い、共重合化させました。各ブロックの長さを系統的に組み合わせて、合計9種類のマルチブロック共重合体の合成に成功しました。
合成した共重合体の数平均分子量を、ゲルろ過クロマトグラフィー法によって推定したところ、およそ2万〜4万の範囲の分子量をもつことが分かりました。これらの値と、各ブロックの重合度からブロックの繰り返し数を算出することができ、どれも狙い通りマルチブロック構造を形成していると推察されます。これらの物性を比較することによって、物性とブロック長との相関を調査することにしました。次回は、その詳細について紹介したいと思います。
産業技術総合研究所 官能基変換チーム 主任研究員 田中慎二(たなか しんじ)
博士(理学)。2021年まで名古屋大学にて助教として勤務。2021年より現職。専門は、有機合成化学。特に、触媒を用いた物質変換技術、キラル物質合成技術の開発を中心に行っている。近年は、バイオプラスチックの開発も推進している。2017年有機合成化学奨励賞。
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