――無洗米専用ではあるんですが、そのあたりの反応ってどうなんでしょう。今はもうあんまり抵抗ないのかなと思うんですよね。僕もコイン精米所で籾から精米するんですけど、無洗米コースで精米してますもん。
林田氏 抵抗感は間違いなく減ってきてると思いますね。私たちも当然、無洗米に絞って問題ないのかは、くまなく調査しました。
無洗米がおいしくないと思ってる人はもっと多いのかなとイメージしていましたが、少なくなってきている印象です。自動で計量ができて、自分で洗米も水のセットもしなくていい、という特徴とセットなら、精白米から置き換えも検討しますという人は多かったんです。
瀬良氏 実際目隠しをして普通のお米と無洗米を食べ比べてもらう調査も実施していまして、「どっちもあんまり変わらなかった」「違いが分からないぐらい無洗米もおいしい」などという感想を得ています。無洗米のレベル自体も上がってきているっていうのが1つあるのかなって思いましたね。
林田氏 お客さまによって評価のポイントが変わってくる商品だと思っていますが、意外だったのは、炊き立てが毎回食べられることがすごく良いという評価をいただけていることです。実際に使ったお客さまに、「炊飯の頻度がすごく高くなりました」「家で炊きたてのご飯を食べようと思う機会が増えました」と言っていただけたのは、とても良かったです。
おかずは出来合いのものを食べるからこそ、ご飯だけは炊きたてのもので、みたいなこだわりは、日本特有かもしれないなとは思いますけど、割と強いニーズとしてあるようですね。
瀬良氏 最近、受験生のお子さまがいらっしゃる、本当にお忙しいご家庭が購入されたのですが、「すごく便利になりました」とお声をいただきまして。受験生のお子様がいても2合で消費量が収まっているようです。今まで捉えきれなかったお客さまにも、しっかりリーチしていくことは、これからの活動でもやっていきたいなと思います。
――これ、ここまでできたなら当然後継機はどうするんだという話になってくると思うんですけど、今の時点で足りないなというのはどのあたりでしょうか。
林田氏 もう少し時間をかけてお客さまの反応を見ていきたいなとは思っています。当然炊飯容量の話もあるでしょうし、炊飯スピードの話や無洗米以外にも対応させるというアイデアもあります。
やはり普通の炊飯器を使っている人からすると、できないこともまだ多いように見えていると思いますしね。その中から、次回の製品に生かさないといけないポイントを、精度上げて吟味しようとしています。
この製品について、私たちとしてももう少しお伝えしないといけないなと思っているのは、「ちゃんとおいしく炊けるんです」ということです。自動で計量できるので炊飯条件が安定して炊けるので、おいしいんですよ。ちょっとガジェットっぽいので、味は期待しづらいと思われている方も実際いるでしょうけれど、そうじゃないですよとお伝えしたい。その上で、新しい使い方をご提案できたらいいなと構想しています。
瀬良氏 まだ検討中ではあるんですけども、米穀メーカーさんの方から「付加価値のあるお米」ということで、無洗米をもっと推していきたいとお話をいただいてまして。それと合わせて、コラボで何かできないか考えています。
今までの家電量販店とかEコマースサイトではなく、例えばスーパーさんとか、もっと生活に寄り添ったチャンネルも開拓していければなと思っております。
筆者も実際に製品をお借りして1週間ほど使ってみたが、本当に炊き上がりがふっくらでおいしい。普段は購入7年目になる大手専門メーカーの炊飯器を使っているが、それに比べても本当に少量でおいしく炊けるのである。商品を返却するため元の炊飯器に戻したところ、子どもたちも「ああ……」とガッカリしていた。それぐらい、炊き上がりに違いがある。
保温機能がないことも、特に不便は感じなかった。長時間保温はどうしても味が落ちるし、冷めたところでラップに包んで冷凍し、都度解凍した方がよい。
水さえ入れて置ければ、遠隔で炊飯量を決められるのもいい。買い物中に今日はカレーにしようと思ったら、スーパーの中からカレー用に炊飯モードを変更できる。実際水を少なめにして、硬めに炊き上げてくれた。
白物家電の中でも、炊飯器は比較的早くから登場したジャンルだ。それゆえに完成されたものとして君臨しており、人間の方が炊飯器の都合に合わせるという生活が続いてきた。
だが本機の登場で、また新しい「食」の形が見えてくる。買い物中に今日のおかずが決まってから、炊飯量をリモート指示。炊き上がりをすぐに食べて、無駄なく食べきるというサイクル。
これまで何十年も変わらなかった、いつ炊いたのか分からない保温されたごはんを仕方なく食べるという食の「常識」を、みごとにひっくり返す商品である。
小寺信良(こでら のぶよし)
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手掛けたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Twitterアカウントは@Nob_Kodera
近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)
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