旭化成は、電子部品事業の主力製品として、高性能コアレス電流センサー「Currentier」、オーディオソリューションブランド「VELVET SOUND」、モバイル機器用カメラ制御ソリューションを展開している。
Currentierは、化合物半導体技術、アナログ回路技術、パッケージ設計技術を生かした高性能な電流センサーで、搭載された高感度ホール素子と独自のパッケージ技術により、小型で高精度、高速応答、低発熱での電流検出に対応している。自動車の電動化で必要な電源制御システムや充電ステーションの電源モジュールにも利用でき、EV(電気自動車)に備える電動システムの小型化/部品点数の削減も実現し、走行距離の延伸と高速充電に貢献する。
VELVET SOUNDでは、車内向け音響システムの設計、オーディオIC、ソフトウェア、チューニングなどのソリューションを提供する。車室内のさまざまな音響信号を処理するために開発された、柔軟性が高い旭化成製のDSPと最適化されたソフトウェアアルゴリズムを扱っている。
モバイル機器用カメラ制御ソリューションは、高精度の位置検出と精密位置コントロールを実現するCPS(Close Position Sensing)制御ICで、スマートフォン向けカメラの高機能化/小型化に貢献する。こういった点が評価され累計40億個以上を出荷している。
電子材料事業では、「微細化」「高集積化」「高速化」が進む次世代半導体パッケージ市場に向けて、半導体チップの実装工程材料として感光性絶縁材「パイメル」、潜在性硬化剤「ノバキュア」を、プリント基板(PCB)の実装工程材料として感光性ドライフィルム(DFR)「サンフォート」、PCB用絶縁材のガラスクロス、ノバキュアを展開している。
パイメルは、半導体チップの表面保護と銅配線用層間絶縁膜用の感光性材料で、旭化成が長年培ってきた技術開発力と品質保証体制により、スピーディーかつ安定的に供給されている。生産体制を拡充しパイメルを増産するために、2023年に品質保証棟を新設し、2024年12月には150億円以上を投資して富士工場(静岡県富士市)を稼働する。
ノバキュアは、マイクロカプセル技術により貯蔵安定性と低温での即硬化性を実現した潜在性硬化剤で、エポキシ樹脂接着剤の硬化剤として電気/電子分野を中心に幅広く採用されている。今後は、熱硬化制御の容易性により高精度で精密な接着工程を実現できる点を生かし、次世代半導体パッケージ向けにノバキュアを展開する。これにより、次世代半導体パッケージ市場の成長に伴い2030年の売上高で2022年比倍増を見込む。
ガラスクロスはPCBの補強材/絶縁材として使用されるガラス繊維の織物で、同社は、スマートフォンやタブレット端末などの小型/薄型デジタル機器に使われる極薄ガラスクロスの開発で市場をリードしているという。加えて、カスタマイズ品の提案により幅広い顧客で豊富な採用実績を持つ。今後は、AI(人工知能)の需要拡大を受け低損失で高速通信を実現する低誘電ガラスクロスの需要が急増している点を考慮し、この需要を捉えた次世代のガラスクロスを開発することで2030年の売上高で2022年比3倍増を見込む。
サンフォートは、PCやスマートフォン、サーバ、自動車などに利用されるプリント配線板とパッケージ基板の回路形成に使用されるDFRで、グローバルで高いマーケットシェアを有し業界大手へ供給されており、先端半導体パッケージ領域で採用が拡大している。2022年におけるサンフォートの販売数量シェアは、DFR市場全体で23%を、パッケージ基板向けDFR市場で39%を占めている。
なお、パッケージ基板市場向けDFRの需要は、プリント配線板とパッケージ基板の回路面積が増加傾向にある影響で、2022〜2028年に年平均13%で成長する見通しだ。
そのため、同社は回路面積が多い先端パッケージ基板向けにサンフォートの機能を強化し市場をリードしていく方針だ。「旭化成の強みである『ニッチな技術』をさらに磨き、最先端技術を支える高機能部品/材料を展開するとともに、最先端の技術領域への拡大投資を行い、2030年に向けて1000億円規模の拡大投資を計画している。これらにより、マテリアル領域の大きな収益の柱とする」(山岸氏)。
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