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» 2023年12月20日 07時00分 公開

新たなビジネスモデルで「物流三悪」が加速、オリンパスはどう対応したのか物流のスマート化

MONOistがライブ配信セミナー「サプライチェーンの革新〜資材高騰・部品不足に対するレジリエンスとは〜」を開催。本稿ではオリンパスの原英一氏による基調講演について紹介する。

[長町基MONOist]

 MONOistはライブ配信セミナー「サプライチェーンの革新〜資材高騰・部品不足に対するレジリエンスとは〜」を2023年11月6〜7日に開催した。本稿では、同セミナーにおいて、オリンパス SCM Logistics & Transportation JAPAN Directorの原英一氏が「サプライチェーンの環境変化に立ち向かう強いチームづくり」と題して行った基調講演について紹介する。

AutoStore、バケット自動倉庫、ユニシャトルを導入

オリンパスの原英一氏 オリンパスの原英一氏 出所:オリンパス

 講演では、原氏が2018〜2021年にかけて取り組んだ物流センターの自動化プロジェクトと、それにより構築したシステムの全容などが披露された。

 オリンパスといえばデジタルカメラや顕微鏡などの製品を連想するが、カメラ、顕微鏡の両事業とも既に他社に売却しており、現在は医療事業にほぼ全ての経営資源を集中している。医療事業は大きく内視鏡と治療機器から構成される。売り上げの多くは海外にシフトしており、売上高8819億円(2023年3月期)のうち国内向けは14%にすぎない。そのため、品質、コストの水準とともに、企業風土や価値観などもグローバル基準に変えていくための取り組みが現在も行われているという。

 国内物流拠点は北から、弘前(青森県弘前市)、白河(福島県白河市)、相模原(相模原市南区)、東大阪(大阪府八尾市)の4カ所(製品、部品が各2カ所ずつ)にある。これらのうち、中核となる相模原物流センターは2014年に川崎市から移転して開設したものだ。きっかけとなったのは2011年の東日本大震災であり、そこから自然災害に対しての脆弱性を認識したという。そこで、強固な地盤や免震構造の建屋を求めて相模原へと移ったという経緯がある。物流センターの機能としては、国内物流の中核拠点に加えて、国内工場で生産する製品を海外に輸出する機能も担う。センター内業務は物流会社のロジスティードに委託しており、自社車両も保有していないことから、外部の輸配送業者を自社でコントロールする形態をとっている。センターで扱う製品群は内視鏡から治療機器まで、サイズの大小や形状がさまざまなものが保管されている。

 相模原物流センターに導入した設備は自動倉庫ロボット「AutoStore」、バケット自動倉庫、ユニシャトルの3種類だ。AutoStoreは単位面積当たりの保管効率を、バケット自動倉庫は作業スピードを、ユニシャトルはピック完了品の順立て/配送便自動排出などを重視しており、導入に当たっては「それぞれの機器の持つ強み、特徴を最大限生かした使い方をしたつもりだ」(原氏)という。

道具の配置は「取りやすいこと」よりも「戻しやすいこと」を優先

 同センターの自動化システムには3つの特徴がある。1つ目は、先述したタイプの異なる3種類の自動倉庫を1つのシステムあるいは1本のコンベヤーで結んで連携/連動させている点である。2つ目は、GTP(Goods to Person)概念を取り入れた業務設計である。物流センターの実業務にかかる工数の6〜7割ともいわれる作業者の歩行の削減を目指して、人が物にアクセスしにいくのではなく、物が人のところにやってくるという考え方が基本になっている。そして3つ目は、人の動きでボトルネックを発生させてはいけないということから、動作経済法則を用い作業者の動きを最小化するような工夫を施したデザインにしたことだ。

 新たに導入した3種類の物流機器は検討を重ねた上で導入した。まず、AutoStoreは「保管効率と作業効率の両立に魅力を感じた」(原氏)という。各作業ポートでは作業者の体の動きを最大で左右90度以内に設定するなど人をなるべく動かさない設計にした。ピッキングはオーダーピッキング方式で、目の前に現れる品目は同一出荷先の物が連続して流れてくるようになっている。

 バケット自動倉庫は、収納力はAutoStoreの3分の1程度だが、排出能力が高いことが特徴。品目の出荷頻度でみると、バケット自動倉庫には出荷頻度が最も高いAランク品を、AutoStoreにはBランク以下の物を格納するようにしている。バケット自動倉庫を運用する際の作業者のポジションでも、一番にこだわっているのは作業者を徹底的に動かさないところにある。また、システム全体を通して各ポジションで使う道具などは「取りやすいこと」よりも「戻しやすいこと」を優先して置き場や置き方を決めている。これは、戻しにくいとそこに戻さなくなり、そして取りにくくなるという負の連鎖によるタイムロスを極小化することを狙ったコンセプトだ。特に「反復運動で作業が構成されているポジションは、このような小さなこだわりの積み重ねが機械のもつポテンシャルを最大限発揮させる秘訣だと考えている」(原氏)とした。

数値目標の達成とともに物流プロジェクトに関わる多くの人材が成長

 相模原物流センターにおける自動化への取り組みの発端は、2016年に発表したオリンパスの中期経営計画までさかのぼる。そこで示された「インストールビジネス型医療ビジネスから症例数ベース型医療ビジネスへのシフトが全ての始まりだった」(原氏)。

 これは例えば、内視鏡システムなどのシステム一式を売って利益を確保するというビジネスモデルから、病院などでそれらのシステム使った際に多く消費される消耗品に売り上げの軸足を移したり、拡大したりするビジネスモデルに移行するというものだ。消耗品の物流特性は、多頻度、小ロット、短納期だが、原氏はこれらを「物流三悪」と呼んでいる。この物流三悪が、中期経営計画で示された新たなビジネスモデルにより一層加速することが予想されたため、物流部門としては大きな衝撃を受けたという。

 また、さらなる売り上げの伸長と、営業利益率拡大を目指す方針も2019年に示された。売り上げが増え、取り扱う物量も増大する一方で、物流費を上げることができない中で、物流の持続性に対する強い危機感を抱いた。加えて人手不足も懸念されていることから、省力化、省人化を中心とした自動化システムの導入へと舵を切る必要があったのだ。

 そして、作業スピードアップ、省人化、保管効率向上を目的に置いて2018年にプロジェクトを開始した。2016年の中期経営計画発表からプロジェクトのキックオフまでの2年間は調査/研究に時間を割いた。その一環となるのが、自主研究会の定期的な実施である。そこでは、他社の導入事例をレポートしスタッフ全員で共有するなどして意識醸成に力を注いだ。プロジェクトのキックオフ後の推進体制としては、プロジェクトリーダーの下、業務再設計WG(ワーキンググループ)、事業協業WG、設備WG、システムWGなどを置き、そして原氏と各WGのリーダー構成するPMO(プログラムマネジメントオフィス)では、コスト計算と効果の試算を行った。

 こうした取り組みによって2021年に相模原物流センターの新システムが稼働し、当初目標であるスピードアップでは出庫行数を38%向上、省人化では業務委託費を31%削減、保管効率では保管可能数を29%向上という当初目標を4年前倒しする結果が得られた。原氏は「これら数値目標の達成とともに、物流プロジェクトに関わる多くの人材が成長したことも大きな成果といえるだろう」と述べている。

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