アイコムがIP50Gの販売を推進していく業種として挙げているのが製造業と建設業である。中でも製造業については、自身もモノづくりを行っている製造業であることから、同社の国内工場である和歌山アイコムにおけるIP50Gの活用事例を積極的に発信していく考えだ。
会見では、「ピッキング台車のサーバ接続ネットワークに5Gを活用」「大雨センサーと5Gを連携させた監視システムを構築」「映像とAI処理による作業者作業分析システムを工場内に構築」という3つのユースケースを紹介した。
「ピッキング台車のサーバ接続ネットワークに5Gを活用」では、生産ラインに投入する部品のラベル読み取り、自社ラベルの発行と貼付、重量確認といった作業を行っていたピッキング台車のデータ通信ネットワークについて、Wi-FiからIP50Gによる5G通信に置き換えた。Wi-Fiの場合、アクセスポイント間で干渉を起こすことが課題になっていたが、5Gにすることで安定した電波品質が得られるようになった。アイコム 社長室 商品企画課 課長の飯干勇一氏は「和歌山アイコムと本社の資材納品データ管理サーバをクラウドベースのVPN(仮想プライベートネットワーク)でつなぐことで、高いセキュリティを維持しながらリモートサーバに接続できた」と説明する。
また、和歌山アイコムが賃貸で利用している外部倉庫で部品を出庫する作業にもIP50Gの5G通信を利用している。賃貸物件であるためWi-Fi設備工事が難しかったが、Wi-Fi通信機能搭載のバーコードリーダーとIP50Gを連携することで仮設のWi-Fiネットワークを構築できたとしている。
「大雨センサーと5Gを連携させた監視システムを構築」では、カメラ、温湿度/気圧センサーを組み込んだ電子百葉箱、降雨センサーとIP50Gから成るセンサーシステムを構築し、製品出荷におけるトラックへの積み込み作業時にゲリラ豪雨などで梱包資材やパッケージなどにダメージを与えないことを目的としている。今回のユースケースでは、国内向け出荷場と海外向け出荷場、それぞれにセンサーの場所などを変えて監視システムを設置することで、どちらがより有効なのかなどを確認している段階である。
「映像とAI処理による作業者作業分析システムを工場内に構築」は、アイコムが工場スマート化の一環として取り組んできたAI(人工知能)による作業内容分析システムを、5G通信が可能なIP50Gによって可搬性を持たせる狙いがある。「作業分析はずっと同じ場所で使い続けることはなく、従業員の習熟度や生産ラインの状況に合わせて使いどころが変わってくる。IP50Gの5G通信によって可搬システムとすることでそれが可能になるとともに、映像データを取り扱うことで大きくなっていた工場内のネットワーク負荷を軽減できるという効果も得られた」(飯干氏)という。
これら工場での活用事例の他、高速の5G通信を用いた映像データに基づくAI画像解析機能と、アイコムが得意とする無線機やトランシーバーと連携した通報/通知システムの開発も進めていく方針である。介護、警備、交通などの用途を想定している。また、デバイスパートナーとして加盟しているKDDIの5Gビジネス共創アライアンスのエコシステムを活用しながら、IP50Gやアイコムの強みを生かしたソリューションをワンストップで提供していく方針である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.