製造業兼スマート工場ベンダーであるiSTC、200社への導入実績を生かし改善を加速製造業がサービス業となる日(1/2 ページ)

中小、中堅企業向けのスマートファクトリー関連製品を展開するi Smart Technologiesは2019年9月12日、都内で3周年記念イベント「iSTC Evolution TOKYO 2019」を開催し、同社の今後の取り組みとともに新製品「iXacs」の紹介を行った。

» 2019年09月24日 07時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 中小、中堅企業向けのスマートファクトリー関連製品を展開するi Smart Technologiesは2019年9月12日、都内で3周年記念イベント「iSTC Evolution TOKYO 2019」を開催し、同社の今後の取り組みとともに新製品「iXacs」の紹介を行った。

中小製造業が活用できるIoTを

 i Smart Technologiesの母体は愛知県で自動車部品を製造する中堅製造業「旭鉄工」である。もともと「人には付加価値の高い仕事を」をコンセプトとし、自社内の工場の改善や自動化を進めるのに、IoT(モノのインターネット)を活用した安価でシンプルなシステムを自社開発。大きな成果を得られたことから「自社以外にも役立てられるのではないか」と考え、スマートファクトリーソリューションを展開する独自会社として、i Smart Technologiesを設立した。

photo i Smart Technologies CEOの木村哲也氏

 i Smart Technologies CEOの木村哲也氏は「中小製造業の現状を見ると、基本的にはアナログで人が紙に記録しているというのが現状だ。さらに、記録しているだけでも努力している方で、多くは記録も残していない。こうした状況で負担が大きくなるようなシステムの導入は難しい」と自社の過去を振り返りながら分析する。

 その中で中小製造業に対し、負担が小さく、成果がすぐに出るような形はどういうものがあるのかを模索する必要があった。木村氏は、トヨタ自動車で生産調査室などで勤務した経歴があり、ここで「トヨタ生産方式(TPS)」の考え方を活用。「TPSの活動測定項目として必ず記録するものが、生産数、停止時間、サイクルタイムである。全稼働時間から停止時間を引き、サイクルタイムで割った数字が生産数となる。生産数を増やすには、停止時間を減らすか、サイクルタイムを短くするかの2つしか方法はない」(木村氏)。

 製造現場のIoTといえば、振動や温度などさまざまなデータを取得しようという動きもあるが「取得するデータが増えれば増えるほど、コストも増え、手間もかかるようになる。データの種類をどうするかを考えなければならない。振動や温度は停止時間を減らすために使うもので、そこがボトルネックであるならば効果が出る可能性はあるが、データをまだそれほど使っていないのであれば、停止時間とサイクルタイムに特化すべきだと考えた」と木村氏は語る。

 これらのデータを自動測定するためにIoTを活用。とはいっても、複雑なシステムは導入が難しいため、積層信号灯の点灯状況を光センサーで取得する方法と磁器センサーにより取得する方法により、製品ができた時にパルスを発生させ時刻を記録するという仕組みを作った。「パルスの間がサイクルタイムとなり、パルス数が生産数となる。そして来るはずに時間にパルスが送られてこなければその時間が停止時間となる。簡単な仕組みだが、生産改善の基本的な3つの項目がこれだけで取得できるようになる。現状把握を行い、改善サイクルが回せるようになった」(木村氏)。

 旭鉄工ではこの仕組みを100ラインに導入し、平均で約43%の生産性改善を実現できたとする。さらに1ライン当たりの使用量は1日300円程度と低価格である。木村氏は「今までに200社以上に導入しデータ収集の実績があるが、その内80%以上が中小製造業である。既存のITベンダーとは異なる顧客層を開拓できている」と実績について語る。

製造業IoTは経営状況を把握するツールに

 ただ、これらの取り組みの中でも「さらに改善を加速させ、成果が得られるまでの時間を短くする必要がある」と木村氏は語る。

 そこで、3つの取り組みを今後進める方針を示す。1つ目が改善加速ツールの開発として従来展開してきた「製造遠隔ライン監視システム」をリニューアルし「iXacs」という新たなブランド名を付けて展開する。より分かりやすくすることで改善効果をより短期で得られるようにする。リニューアル内容については次ページで紹介する。

 2つ目がデータ活用のサポートツールの充実である。「さまざまな提案を行ってもデータ活用を阻む“3ザル”があったと感じている。データを見ない『見ざる』、見ていても言わない『言わざる』、全てを把握していても使おうとしない『使わざる』だ。データにどう向かい、どう活用していくのかという人の面での前段階の準備が実は重要だということに気付いた。そこにもソリューションを提案する」と木村氏は語る。

 具体的には、NTTドコモとの協業によりEラーニング「i Smart Academy」を用意し、改善を進める前に事前学習を行えるようにした。さらに改善力養成コンサルティングサービス「i Smart Consulting」、短期の製造データを預かりi Smart Technologies側での分析結果をレポートする「i Smart Report」などを展開する予定である。

 3つ目が、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進である。i Smart Technologiesが推進してきた製造IoTのデータをより経営活動全体に活用するために、NTTドコモ、ウイングアーク1stと提携し、両社のパートナーと通じて展開を広げていく。また、製造IoTデータをより重要経営情報として、より幅広い領域での活用を訴えていく。具体的には金融業界との連携なども進めていく。

 木村氏は「中小製造業にとって製造情報は経営状況と密接に関係している。ただ、銀行などの融資担当者は工場のことは分からない。ここで、先ほどの製造IoTの情報を活用する。生産数は売上高に関係し、稼働時間は労務費と密接に関係する。そして停止時間は改善余地として考えることができる。銀行や金融機関にとっても違った目で見た融資判断ができるようになる」と新たな利用方法を訴えた。

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