生駒氏は工業デザイナー出身で、玩具メーカーに就職した当時は、キャラクターコンテンツ(有名な変形ロボット)のデザインや試作開発などに取り組んできた。さらに家電メーカーではデザインエンジニアを経験した他、ロボットメーカーでは家族型ロボットの開発にも携わってきた。仕事をしながら、TATAMEL BIKEの構想を練り、その後、ICOMAを立ち上げた。
最初は個人で活動していたが、TATAMEL BIKEは多くのメディアにも取り上げられるようになり、瞬く間に大きな話題を呼んだ。事業化し、量産化を目指す中で、さまざまな企業とも連携しながらマーケットの開拓にも務めている。最近ではフランスで開催された展示会に出展し、北米だけでなく欧州市場にもアプローチしている。
TATAMEL BIKEの着想は2016年ごろからで、改良を重ねた現行モデルの初回オーダーメイド受注を2023年5月6日〜7月9日の期間に行った。TATAMEL BIKEが大きな話題を集めた理由について、生駒氏は「玩具メーカー出身ということもあり、そこで得た変形する技術(トランスフォーム)のアイデアを、従来なかったモビリティの世界に取り入れたこと。それに加えて駐車場がいらないという実用的なメリットが加わったことで注目を集めたのではないか」と分析する。また、TATAMEL BIKEの12分の1サイズのカプセルトイも発売し、初回4万個以上も出荷されたという。こうした活動もTATAMEL BIKEの認知拡大に大きく貢献した。
さらに“走るポータブルバッテリー”として、防災や趣味に活用できるというコンセプトも評価されている。他企業とコラボレーションして製作した小型のV2H型蓄電コンテナ「ハコベルコンテナ」など用意し、TATAMEL BIKEが災害時などに有効活用できることも提案している。
TATAMEL BIKEはプロトタイプの段階から、積極的にSNSや展示会で露出することで、早い段階から認知拡大を目指した。開発面のフィードバックなどもリアルタイムに反映し、“皆で作る製品”としての注目度も高まり、多くの支援者の獲得にもつながっていった。
ICOMAでは、スタートアップならではの視点から、次の時代に新しいものを提案できるようにソーシャルニーズのある商品をいち早く形にすることで、業界全体のさらなる活性化を目指している。今後も、デザインだけでなく、それ以上に社会に実装されたときにどのようなインパクトを生み出すかを考えながら開発を行っていく方針だ。
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