MONOist 2020年7月に発売したロボット統合コントローラーは実際に導入が進んでいるのでしょうか。
氏本氏 当初描いた目標に対しては少し届かないという状況だが、それはコロナ禍があった点が大きい。採用数は着実に増えている。日本の顧客にも標準搭載で採用されたケースなどもある。その分、要求のフィードバックなども多くもらっており、ソフトウェアのユーザビリティなどの自社制御製品の改善などにもつながっている。また、従来の製品領域をまたがる製品であるため、オムロングループ内でのシナジーも進み、ソリューション提案へのシフトなどの成果も得られている。
ロボット統合コントローラーは、ロボットの制御と製造ラインの機器の制御を同じコントローラーで行えるようにしたもので、それぞれの制御プログラムの構築や同期を行う手間などを削減でき、立ち上げ期間の短縮が行える。高精度のシミュレーションも行えるため実機での調整期間も減らすことが可能だ。また、両方の整合性を取りながらライン構築が行えるためにタクトタイムの削減にも貢献する。こうしたさまざま点が高く評価を受けている。
MONOist どういう形で採用が進んでいるのでしょうか。新たなライン構築を行う際に入るケースが多いのでしょうか。
氏本氏 もちろんライン全体を新たに構築する際に、ロボット統合コントローラーを採用するケースもあるが、ロボットを導入する際に周辺の制御や工程集約を行う話に派生して採用が決まるケースもある。
例えば、新たにパレタイジングでロボットを導入する際にパラレルリンクロボットを2、3台設置することになるとその同期制御を考えてワンコントローラー化したいという話になる。さらにコンベヤーのサーボモーター制御や、ピッキングして箱詰めするようなロボット作業までを一元的に制御できるようにする話なども出てくる。これらのように工程をつないだり集約したりするような動きに広がってきた時に、ロボット統合コントローラーであれば非常に簡単に実現できる。そういう提案を進めることで採用が広がっている。
MONOist 今後のロボット事業の成長についてはどのように描いているのでしょうか。
氏本氏 産業用ロボットや協働ロボットについては、モノをつかんだり置いたりという作業をさらに高め、組み立て工程領域を変える存在となっていきたい。組み立てを含む後工程はまだまだ人手による作業が数多くあり、人手不足などの影響に加えて、品質を確保するという意味でも重要になると考えている。そのために、人手による難しい作業が実現できるようにロボットの基本的な能力を高めていく。また、幅広い用途ニーズに応えるためにラインアップの拡充は引き続き進めていく。
一方、ロボットそのものが作業ミスをしなくても摩耗や劣化などにより、品質を維持できなくなるようなことも起こり得る。それを防ぐためにロボットモニタリングにより常に状態を監視し不具合を起こさないようにする仕組み作りが重要だと考えている。ビジネスモデルはどうしていくかは検討中だが、今後はデータを活用したロボットモニタリングサービスも何らかの形で実施していきたいと考えている。
期待が大きいモバイルロボットについてはさらに強化していく。ラインアップ拡張に加えて、ソフトウェアの強化も進めていく。例えば、シミュレーションについては従来は数台での導入が多かったが、数十台を同時に動かすようなニーズが今後は増えてくる。そうした時に既存のソフトウェアでは時間がかかりすぎるために、今後はこうしたソフトウェア面でもさまざまな機能や性能も高めていく必要がある。
新たな商品領域としては、モバイルロボットと協働ロボットを組み合わせたモバイルマニピュレーター(MoMa)がどこまで受け入れられるかがポイントだと考えている。モバイルマニピュレーターは運ぶモノや置く場所など使われる環境が全て異なるために、全てカスタマイズになる。ただ、さまざまな実証を通じて共通部分の把握が進み、標準化できる領域も増えてきている。モバイルロボットで行っているように、システムインテグレーターとのパートナーシップにより、業務に応じた上物のテンプレート化のような取り組みが、モバイルマニピュレーターでも行えるようになってきたと考えている。こうした仕組みを生かし、より簡単に使えるようにし普及につなげていきたい。
2023年11月29日から開催される国際ロボット展でもこうした新たな取り組みの姿を見えるようにしていく。商品単体を見せてもあまり意味がないので、「匠を超えるフル自働化ライン」「人とロボットの次世代超フレキシブルライン」「エネルギー生産性の最大化」をテーマに用途に合った形の一連の製造ラインを示し、価値を伝えていく。
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