ロボット事業に2016年から参入し、後発でありながら着実に成長を続けているのがオムロンだ。オムロンのロボット事業の現在地とこれからの方向性について、オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ロボット事業本部 本部長の氏本拓志氏に話を聞いた。
人手不足が深刻化する中、大きな注目を集めているのがロボットである。そのロボット事業に2016年から参入し、後発でありながら着実に成長を続けているのがオムロンだ。2023年度(2024年3月期)も、中国市況の不透明さなどで制御機器事業全体が業績見通しの修正を余儀なくされている中、ロボット事業の売上高は前年度比110%を見込むなど好調を維持している。オムロンのロボット事業の現在地とこれからの方向性について、オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ロボット事業本部 本部長の氏本拓志氏に話を聞いた。
MONOist 2016年に本格参入をしてから7年になりますが、ここまでのロボット事業の手応えについて教えてください。
氏本氏 ここまでは順調に成長してこれたと手応えを感じている。直近の業績も好調だ。制御機器の市場環境は不透明感もあるが、ロボットの需要は引き続き全世界的に強く地域的な濃淡もない。人手不足による作業代替ニーズはそれだけ根強いものがある。ロボットメーカーとしてのオムロンという立ち位置も着実に築くことができたのではないかと考えている。
MONOist モバイルロボット(AMR)がロボット事業成長の起爆剤でしょうか。
氏本氏 モバイルロボットがロボット事業全体の成長に大きな貢献をしていることは間違いない。ユーザーの反応そのものもここ数年で大きく変わってきており、主に3つの方向性で拡大している。1つ目がアプリケーションの広がり、2つ目が工場の中での水平展開、そして3つ目が工場間での展開だ。ユーザーもいきなり全ての搬送工程をモバイルロボットに切り替えるようなことはできないため、例えば、まずは部品の仕掛り品の搬送だけをモバイルロボットに担わせる。そこで安定的に運用ができるようになれば、部品の受け取り元の金型カートリッジの入れ替えなども自動化できるかもしれないという新たな発想が生まれ、さらに広がりが出るという流れだ。
オムロンそのものも自社工場でいまだに人手で搬送している工程もある。しかし、それらを現実的にロボットに置き換えようという動きもここ数年本格的に進んできた。その変化点が今訪れているとリアルに感じている。
MONOist モバイルロボット以外の産業用ロボットや協働ロボットについてはどうでしょうか。
氏本氏 順調だと考えている。今まで工場の中でロボットを使用する際は、塗装工程など、自動化を前提にしたところが多かった。しかし、こうした環境でのロボット普及が進む一方で、自動化が進んでいない組み立て工程などでロボットを使うようにトレンドが変化してきた。
組み立て工程でのロボット導入となると、ラインを構成する各種機器の動きやコンベヤーの動き、人の動きなどと、協調する必要がある。その中でロボットだけでなく製造ラインの制御も取り扱うオムロンの強みが発揮できる場面が増えた。単なるロボットメーカーと異なる立ち位置で、さまざまな引き合いをいただけるようになっている。オムロンが長らく推進してきたモノづくり革新コンセプト「i-Automation!」のさまざまな提案に「ロボット統合コントローラー」なども加え、より柔軟に製造ラインにロボットを組み込めるようになってきた。オムロンがずっと描いてきたことが、ちょうどロボットの普及環境としても受け入れられるようになり、時代の変化の流れに乗ったといえる。
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