ロボットと制御機器をまとめて制御、オムロンが統合コントローラーを発売FAニュース(1/2 ページ)

オムロンは2020年7月29日、従来は別々のコントローラーとソフトウェアが必要だったロボットと制御機器をまとめてコントロール可能な「ロボット統合コントローラー」を同年7月31日に発売すると発表した。

» 2020年07月30日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 オムロンは2020年7月29日、従来は別々のコントローラーとソフトウェアが必要だったロボットと制御機器をまとめてコントロール可能な「ロボット統合コントローラー」を同年7月31日に発売すると発表した。

“2つの頭脳”の連携が難しかった製造現場

photo オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ロボット推進プロジェクト本部長の山西基裕氏

 労働人口の減少に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による新たな働き方が求められる中、工場内で働く人の数を減らすために自動化ニーズは従来以上に高まっている。しかし、その中で、製造現場内にさまざまな制御システムが連携できない状況が大きな障壁となっている。

 特に、生産ラインの各種機器を制御する制御機器と、自動化領域で汎用的に用いられる産業用ロボットは、全く別の成り立ちで成長してきたことから、メーカーが異なり、これらを制御するコントローラーやプログラミング言語も異なっていた。「同じ製造ラインや設備の中に頭脳が2つあるような状況が生まれていた。そのため、人が五感を使って精密で複雑な作業を行う工程を置き換えようとしても、センサーなどライン情報と産業用ロボットのタイミングを合わせるのが難しい状況が生まれていた。結果として、複雑な作業は人が行わざるを得ず、ロボットは『単純な作業を高速で行う』用途でしか使えなかった」とオムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ロボット推進プロジェクト本部長の山西基裕氏は製造現場の課題について語る。

photo ロボットを使った生産設備の状況(クリックで拡大)出典:オムロン

 そこで、これらの課題を解決し、バラバラだった制御機器とロボットを“1つの頭脳”で統合制御し、ラインのさまざまな情報を生かしながら正確なタイミングで一体制御できるようにするためにオムロンが開発したのが「ロボット統合コントローラー」である。

 これは、今まで異なっていたロボットとマシン制御のプログラミング言語を統一し、1つのソフトウェア統合開発環境上で簡単にシミュレーションできるようにしたものである。プログラミング言語は汎用的なIEC言語に統一した。これにより、PLCのエンジニアもロボット制御を設計することが可能になる。ロボットのプログラミング言語をマシン制御の言語に“翻訳”できる仕組みを組み込んだわけではなく、ロボットのプログラミング言語や動きの仕組みを一から読み解き、それに相当するマシン制御のプログラミング言語体系を構築することで精緻なタイミングや動きを実現できるようにしたという。

 「“翻訳”的な作業を行うとマシン制御とロボット制御のタイムラグが発生し、従来型のシステム連携とあまり変わらなくなる。今回は1つのプログラミング言語と制御機構で一体となって制御できることで、同じタイミングで精密な動作が行えるようになったことが特徴だ。これにより複数のセンサー情報などを組み合わせて複雑な作業を行っていた人手による組み立て作業などが置き換えられるようになる」と山西氏は意義について述べている。

 オムロンでは2015年9月に米国の産業用ロボットメーカーであるアデプト テクノロジー(Adept Technology)を買収してロボット事業に本格参入したが、そこからロボット制御の仕組みを読み解く作業を続けてきたという。「時間はかかったが制御機器メーカーとして当時から実現したいと思っていたものがようやく形にできた」と山西氏は語っている。精密さを実現するために、現状ではオムロン製のロボットでしか統合制御はできないが「今後はパートナーシップなどを結び、他社製品でも対応を増やしていく可能性はある。柔軟に対応する」(山西氏)。

photo 「ロボット統合コントローラー」により“ILOR+S”を同期制御できる(クリックで拡大)出典:オムロン
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