イトーキが導入したのは、キヤノンが開発したMRシステム「MREAL」だ。イトーキでは、2021年からデザイン検討プロセスの中でMREALの活用を始めており、数々の製品開発に役立ててきた。2023年9月下旬には機材を一新して、広視野角モデルのHMD「MREAL X1」を新たに導入し、その活用をさらに加速させようとしている。
「システムが新しくなり、旧システムよりもクオリティーやパフォーマンスが向上している。動作環境として、以前はデスクトップ型のワークステーションを用いていたが、現在はモバイルワークステーションでもスムーズに動かせる。HMD自体も小型かつ軽量になり、マーカーも基準となる原点マーカーだけで使用できるため、以前のように場所を限定して利用することなく、どこでも自由に持ち運んで使えるようになった。さらに、解像度も視野角も向上したため、よりリアルで違和感のないMR体験が可能となった」と和田は述べる。
現在は旧システムから新システムへの移行を段階的に進めており、テストしながら本格運用に向けた準備を整えているところだという。
イトーキでは、張り地などのリアルなテクスチャーを3Dモデルに張り付けるために、ゲームエンジン「Unity」で制作した高精細3DグラフィックスをMREAL上で融合表示できるプラグインも活用している。同社 スマートオフィス商品開発本部 プロダクト開発統括部 プロダクトデザイン部 第2チームの深谷壮麻氏は「『リアル感がもっとほしい』というデザイナーからの要望に応えるためにUnityのプラグインを入れた。使いこなすまでにスキルが必要で苦労した面もあるが、結果として導入してよかった。今回システムも新しくなったので、チューニングしながらよりハイレベルなことにも挑戦していきたい」と意気込む。
さらに、今回のMREALの新システム導入に併せて、旧システムを滋賀県近江八幡市にあるイトーキ 関西工場の設計部門に移設した。その狙いは、東京と滋賀の遠隔地間リモート接続によるMRデザイン検討の実現にある。MREALには、物理的に離れていても同じMR空間を共有して、コラボレーション/コミュニケーションできる機能が備わっている。「これまでも企画、デザインを行う東京と、設計を行う滋賀との間で、モックアップの確認/評価のために担当者が出張するケースがあったが、両拠点でMREALを運用することで物理的な移動を伴わないデザイン検討が可能となる。近いうちに実現するため、現在準備を進めている段階だ」と管氏は期待を寄せる。
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