オムロンではこれらの方向性でロボットの普及を推進しているが、その中でロボット導入を阻害する3つの壁があることに気づいたという。オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ソリューション営業本部 本部長の伊達勇城氏は「ロボット導入を進めるにおいて『具体化の壁』『検証の壁』『実装の壁』の3つが大きいと気づいた。この3つをいかに乗り越えるかがロボットの普及促進の大きなポイントになる」と訴える。
1つ目の「具体化の壁」とは、ロボットをどのように活用して製造現場における課題解決を進めるのかという構想具体化だ。伊達氏は「製造現場ではロボットの効果的な活用で悩んだり、導入に向けた具体的な実現手段が分からなかったりするケースもある。またどういうロボットを活用すべきかなどという点でも悩み、具体的にロボットを活用するまでに至らないというケースがある。こうした悩み事を解決することがロボットメーカーにも求められている」と考えを述べている。
オムロンではこうした壁に対し、産業用ロボット、協働ロボット、モバイルロボットの豊富なラインアップを用意する他、業界別の豊富な導入事例を用意し、より具体的に成果をイメージできるようにしている。さらに、製造現場が分かる制御エンジニアを約200人抱えており、こうしたエンジニアが具体的な導入を支援することで、この最初の課題を乗り越えやすくしている。
2つ目の「検証の壁」は、ロボットを実際の使用環境で活用できるのかという点や、活用した場合にどれくらいの費用対効果が得られるのかという、実際の使用環境に近い形での導入検証における課題だ。これについては、オムロンが開設した共創型の実証施設であるPOC LABを活用し、顧客の環境に応じた工場シミュレーションやモバイルロボットの走行シミュレーション、協働ロボットの実機検証などを行っている。これにより課題を導入前につぶし、すぐに成果が出る形で導入を行えるようにしている。伊達氏は「オムロンのエンジニアが待機しており、ロボットの検証以外に製造ラインとの組み合わせ検証も行える。実際の環境に近いかたちで課題を1つ1つつぶすことができる」とその価値について述べている。
3つ目の「実装の壁」は、実際に導入しようとした際にロボットシステムインテグレーターとのルートがなかったり、エンジニア教育が行えなかったりすることで導入を進められないという課題だ。オムロンでは、既に全国170社のロボットシステムインテグレーターとのパートナーシップを構築しており、ロボット導入のテンプレート作りなども進めている。より短期間で容易に効果のある形でシステム導入できる体制を構築している。
「テンプレートとして多いのはモバイルロボットの上物部分だ。こちらをパートナー企業と共同開発しパッケージ化していることで、ユーザーのニーズに近いソリューションを持つパートナーを紹介すれば短期間のロボット導入が実現できる。また、パートナーにとっても、1社1社のカスタムをすることなく、水平展開を行えるようになる」と伊達氏は強みについて述べている。グローバルについても36拠点でサポートを行うことで、海外展開などを行う場合も継続的な支援が可能だ。
今後の取り組みについてオムロンは「現在の実績は非公開だが、2025年度前後に500億〜600億円の売上高を目指すという掲げた目標は変わっておらず、順調な取り組みを進めることができている。人手不足が進む製造現場において人の代替をするというロボットの役割は増えるばかりだ。ロボットでできることを増やしていくとともに、より使いやすくすることで利用をさらに広げていきたい」と氏本氏は語っている。
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