東北大学は、可視光や次世代通信に必要な電波を透過する、透明な遮熱窓用の基材を開発した。nmサイズの周期構造を持つアルミ製遮熱メタマテリアルにより、波長が異なる電磁波の反射や透過を制御する。
東北大学は2023年10月16日、可視光や次世代通信に必要な電波を透過する、透明な遮熱窓用の基材を開発したと発表した。
新たに開発したnmサイズの周期構造を持つアルミ製遮熱メタマテリアルにより、波長が異なる5G(第5世代移動通信システム)や6G(第6世代移動通信システム)で使用する周波数帯の電波(可視波長)を透過し、熱となる近赤外波長を反射する遮熱窓の基材を作製した。
遮熱メタマテリアルは、アルミを用いて、十字パターンの単位構造を周期460nmで石英ガラス基板上に形成したものだ。33×40mmの領域内にメタマテリアル構造が均一に形成されている。
遮熱メタマテリアルの可視波長から近赤外波長領域における反射率特性を調べたところ、波長約1.1μm、周波数約273THzの近赤外線に対して、80%を超える反射率を示し、従来の金属微粒子を使った遮熱窓よりも高い反射率特性を持つことが分かった。
また、THz帯領域における透過率の検証では、5G通信帯の28GHzや6G通信帯の0.2〜0.3THz付近の周波数の電波に対し、実用レベルとなる80%程度の透過率が得られた。
可視波長領域における透過率は最大77.2%で、60度傾けても約50%以上を保持した。遮熱メタマテリアル越しに見える風景も、さまざまな角度から明瞭に撮影でき、透明遮熱窓として使えることを確認した。
遮熱メタマテリアルは、半導体微細加工技術で形状や寸法を調整可能で、ニーズに応じて反射ピーク波長を変更できる。将来的には、ナノ構造を一括形成するナノインプリントなどの技術を用いて、遮熱メタマテリアルを安価に大面積化できるという。
今回開発した基材は透明で、通信の電波を遮ることなく、遮熱効果を発揮することから、建材や自動車用遮熱窓に応用できる。室内や車内温度の上昇による熱中症の発症防止や、夏季の電力需要の抑制に貢献することが期待される。
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