コニカミノルタが描く勝ち筋、モノづくりの要所を押さえて得られる価値とは(前編)製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

コニカミノルタはインダストリー事業の戦略について発表。豊富な顧客接点とキーコンポーネントを持つ強みを生かし、個々の事業の強みとともに、これらを複合的に提案することで、同事業の成長につなげる。

» 2023年10月11日 06時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 コニカミノルタは2023年10月10日、センシング技術やディスプレイ用フィルムなどを含むインダストリー事業の戦略について発表した。豊富な顧客接点とキーコンポーネントを持つ強みを生かし、製造業のエンジニアリングチェーンに深く入り込むことで、これらを複合的に提案し成長につなげていく方針だ。

 本稿では、前編でインダストリー事業全体の方向性と、複合的な取り組みが実を結んでいるディスプレイ事業の取り組みを紹介し、後編では自動車外観検査事業と半導体製造装置用光学コンポーネント事業の取り組みを説明する。

中規模安定市場×高シェア×高収益性という勝ちパターン

photo コニカミノルタ 常務執行役 インダストリー事業 管掌の亀澤仁司氏

 コニカミノルタのインダストリー事業における強化領域には、センシング、機能材料、光学コンポーネント、インクジェットなどの事業がある。2022年度(2023年3月期)の売上高が1230億円で、営業利益率が約20%となっており、コニカミノルタの他の事業体に比べても安定して高い利益率を生み出している。

 強みとなっているのが、同社が培ってきたコア技術を基に、モノづくりサプライチェーンの中でジャンルトップ製品を構築していることだ。さらに変化の大きな市場ではなく、中規模の安定市場を狙い、その中で高いシェアを獲得することで高い収益性を確保するという勝ちパターンを構築している。コニカミノルタ 常務執行役 インダストリー事業 管掌の亀澤仁司氏は「コニカミノルタの生命線は顧客接点にある。インダストリー事業は限られた顧客企業により深く入ることが重要で、顧客と一緒に事業を作っていくという形がポイントだ」と述べる。

photo インダストリー事業の勝ちパターン[クリックで拡大] 出所:コニカミノルタ

 今後はこうした勝ちパターンを生かしつつ、将来のグローバル経済に大きな影響を持つ「ディスプレイ」「半導体製造」「モビリティ」の3領域への取り組みを強化していく方針だ。これに伴って、従来の製品軸の組織から顧客軸、産業軸への組織として体制を変え、インダストリー事業横断で顧客課題の解決に貢献する。亀澤氏は「モノづくりサプライチェーンの川上から川中の精密ソリューションプロバイダーとして真っ先に声がかかる存在になっていきたい」と語る。

photo インダストリー事業の目指す姿[クリックで拡大] 出所:コニカミノルタ

 顧客軸、産業軸への事業開発体制の転換を進める中で、従来の製品軸ベースではなく顧客に密着したフロント人材組織を設立した。これにより自社の製品ベースでの提案ではなく、顧客課題に寄り添って、インダストリー事業内のさまざまな製品やソリューションを組み合わせた提案を行えるようにした。また、顧客に寄り添い市場動向の変化やその情報の社内活用を行い、新たな製品開発につなげていく。

 その成果の1つとして、ICTメーカーへの提案がある。コニカミノルタではICTメーカーに対し、センシング事業に含まれる計測機器で高いシェアを持っていた。これをインダストリー事業横断での提案を行えるようにしたことで、ICT向け機能性フィルムでの提案が進み、新デバイス開発提案などへと進捗しているという。また、インクジェットによる材料塗布や光学事業のガラス成形技術の応用などさまざまな形で実を結びつつあるという。亀澤氏は「とにかく顧客により深く入り込んでいることが強みだ。その信頼関係を生かしつつ、コニカミノルタが保有するさまざまな技術を提案することで新しい可能性が生まれる」と語っている。

photo インダストリー事業横断での事業開発[クリックで拡大] 出所:コニカミノルタ
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