コニカミノルタはインダストリー事業の戦略について発表した。後編では自動車外観検査事業と半導体製造装置用光学コンポーネント事業について紹介する。
コニカミノルタは2023年10月10日、インダストリー事業の戦略について発表した。前編では、インダストリー事業全体の分野横断型の取り組みと、それを象徴的に進めているディスプレイ事業の取り組みを中心に紹介したが、後編では自動車外観検査事業と半導体製造装置用光学コンポーネント事業の取り組みを説明する。
コニカミノルタのインダストリー事業における強化領域として、センシング、機能材料、光学コンポーネント、インクジェットなどの事業があることを前編で紹介したが、センシング事業における新規領域として積極的に拡大を進めているのが、自動車外観検査事業だ。
センシング事業ではディスプレイ産業向けの光源色計測が最も大きな割合を占めているが、製品の色を計測する物体色計測が2番目に大きな比率を占めている。その物体色計測に近接する領域で現在成長を続けているのが主に自動車産業を対象とした外観検査事業だ。2015年から新規市場として開始し、2019年にスペインのEines Systemsを買収したことで事業拡大のスピードを加速させている。
Eines Systemsは、1992年創業で自動車工場自動化への幅広い知見と商品開発力が特徴で、主要自動車メーカーに自動車向け外観検査装置を展開している。導入済みの製品では年間800万台の自動車の検査を行っているという。Eines Systemsの製品は、インラインでの検査も可能としているトンネル型の外観検査装置を展開していることが特徴だ。トンネル型インライン塗装欠陥検査システムやトンネル型インライン隙間/段差測定システムなどを展開している。
自動車外観検査は車種やデザイン、色などの仕様が多様である点や、車体サイズが大きいということ、微罪な欠陥の検出が必要である点、製造ラインが常に動いているという点など、自動検査を行うためにはいくつかのハードルがある。そのため、現在でも多くの製造ラインが人の目視検査に頼っている状況だ。ただ、人手不足による熟練技能者の減少や技能継承の難しさ、検査データの自動記録や製造ラインへのフィードバックへの要望などにより自動化へのニーズが高まっている。
Eines Systemsのシステムはこうしたニーズに応えるものだ。Eines Systemsのトンネル型検査ソリューションは目視による外観検査を代替でき、従来人手で行うことで発生していたヒューマンエラーを削減できる他、熟練者を必要としなくなることで教育の工程や費用が不要になるなどの効果を生む。過去の導入事例では、作業工数を3分の2に削減できた実績もあるという。さらに、発見した欠陥を修復する後工程に、欠陥データを送信することで、修繕作業の効率化や品質向上に貢献する。
コニカミノルタ 執行役員でセンシング事業本部長の三上健太郎氏は「自動検査装置ではロボットアームを使用したものなどもあるが精度や作業効率などの面から先行導入した設備からトンネル型へと置き換える動きも出ている。インラインで漏れなく検査できるため、トンネル型検査ソリューションの強みがある」と述べている。
自動車外観検査市場は2025年までに市場規模150億円、CAGR(年平均成長率)15%以上で成長するとコニカミノルタでは予測。今後はさらにEines Systemsの基盤を生かしつつ、コニカミノルタの持つ技術力とのシナジーを発揮するとともに、グローバルネットワークを生かした世界的展開を強化していく方針だ。
技術的なシナジーとしては、Eines Systemsの製品力や開発力にコニカミノルタの光学技術、画像AI技術を加えることで、付加価値向上を目指す。具体的には、検査精度向上により異常検出性の改善を進める他、AI(人工知能)による欠陥分類を行い、欠陥要因の特定を行いやすくする。さらに、コニカミノルタのソフトウェアエンジニアリング力で、システムの設置期間短縮を実現する。さらに、得られた欠陥分類データを活用し、要因となった工程の改善提案などを行えるようなスマート製造ソリューションの展開なども計画している。
コニカミノルタ 常務執行役 インダストリー事業 管掌の亀澤仁司氏は「今後製造ラインの中でさまざまなデータを取得し活用していく動きが当たり前のものになる中、検査による品質データを取得できているということは大きな価値につながる。DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れの中、データを活用できる仕組みにも挑戦していく」と語っている。
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