パナソニック インダストリーは2024年1月に、AIを搭載したサーボアンプとモーターによるサーボシステムの新製品「MINAS A7ファミリー」を発売する。
パナソニック インダストリーは2023年9月13日、東京都内で記者会見を開き、AI(人工知能)を搭載したサーボアンプとモーターによるサーボシステムの新製品「MINAS(ミナス) A7ファミリー」の概要を説明した。2024年1月に日本国内で発売し、順次グローバル展開を行う。
さまざまな生産設備で使用されるサーボシステムは、設備に組み込んですぐに要求通りの性能が出るわけではない。設備の構造や設置場所、動作、組み付け誤差などによって当初は意図した性能の動作ができないため、作業者が100以上のパラメーターを調整しながら、装置とのすり合わせを行う。
半導体や電子部品の微細化、生産性の向上、変種変量生産などが進む現在は高度な調整作業が必要になり、熟練者の技術や経験への依存が深まっていた。半導体製造装置や電子部品実装機など精密な位置決め精度が求められる装置に対しては、装置の特性ごとに膨大なパラメーターのすり合わせ調整技術が必要で、熟練者ですら数日から1週間ほど要する場合もあるという。
従来も自動調整機能自体は存在したが、調整可能なパラメーターの数が限られるなど、熟練者の技能には及ばなかった。一方で、熟練者の育成には時間がかかる他、労働力の流動性の高まりや人手不足の影響もあり、技能継承も課題となっていた。
今回、パナソニック インダストリーでは新機能として「precAIse(プレサイズ) TUNING」を開発し、熟練者が行っていたような高度な調整作業をAIを活用して自動化することに成功した。AIが、これまで作業者が手動で数百回行っていた動作指示、結果確認、パラメーター調整というサイクルを高速で繰り返して調整。作業者は初期設定のみ行えばよく、同社の検証では熟練者と比べて、位置決め指令完了後に要求精度の位置に到着するまでの位置決め整定時間は45%、調整作業時間は90%以上削減している。また、過去数万回分の履歴を考慮して最適な調整ができる。
precAIse TUNINGでは2つのAIが稼働している。まず1つ目のAIで対象の装置に有効なパラメーターや動作に応じた調整の方向性などを導き出し、2つ目の最適化AIは1つ目のAIから与えられた指針に沿って調整を行っていく。パナソニック インダストリー 産業デバイス事業部 モーションコントロールビジネスユニット モーションシステム開発部 部長の楠亀弘一氏は「装置の特性を見極めて調整を指針を決める1つ目のAIをつくることができたため、2つ目の最適化AIでの調整時間を大きく短縮し、熟練者以上のスピードを実現することができた」と話す。ただ、1つ目のAIの詳細については言及を避けた。
その他にも、速度応答周波数は従来機比1.25倍の4.0kHz以上となり、エンコーダー分解能は従来機の23bitから27bitへ、モーター最高回転速度は従来機の毎分6500回転から毎分7150回転へ、最短通信周期は62.5μsとなるなど基本性能が向上している。
また、用途最適タイプのサーボアンプでは、センサーなどからのアナログデータをPLCなどコントローラーを経由せずに直接サーボアンプに入力して、データに応じた高速応答制御をサーボアンプの設定のみで行うことができる。このセンサー直結フィードバックは変位制御から始め、圧力制御や高精度ガントリー制御の提供も予定している。
電源は単相AC100Vと単相/三相AC200Vで、三相AC400Vもリリース予定となっている。モーター定格出力は200W、400Wで順次拡大する。制御はEtherCAT、RTEXに対応し、今後アナログ/パルス列/Modbusに対応したシリーズをリリースする。
生産はサーボシステム生産拠点である中国広東省の珠海工場と日本の竜野工場(兵庫県たつの市)で行い、2026年度には月産20万台を目指す。
パナソニック インダストリー 常務執行役員 産業デバイス事業部長の中山聡氏は「現行のMINAS A6ファミリーから約8年ぶりの新製品となる。従来機からの性能の向上だけでなく、業界初のAI調整はユーザーの手間暇を最小化する機能として大きなインパクトがあるはずだ」と意気込む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.