MONOist 直近の受注の状況を教えてください。
中村氏 国内では自動化関連の引き合いが多い。これまでは海外では標準機、国内では特注機というケースが多かったが、国内でも標準機が伸びてきた。また、自動車関係からの受注も増えている。工程分割から工程集約への流れが強まっている。
これまで自動車関係は非常に少ない割合だった。その代わり、建機やロボット、医療、電機、航空機、時計などが同じ等分くらいであった。海外ではフランスは航空機、スイスは時計や医療といったように、国ごとに産業は分かれている。
国内はまいた種が確認に育ってきている。中村留の機械はどちらかといえば「玄人好み」の機械であったため商流もある程度絞ってきたが、これからはもっとオープンに組んでいく。パートナーも増えている。
海外の方が計算できない国が増えてきている。1、2年前と比べて欧米の景気の失速感は確実にある。米国はソフトランディングしそうだが、欧州はロシアのウクライナ侵攻や原材料費の高騰などの影響があり、プロジェクトはあっても決まるまでの時間が長くなっている。
ただ、今後も踊り場はいくつかあったとしても、複合加工機の市場が拡大していくのは明らかだ。
「EMO Hannover 2023」(2023年9月18〜23日、ハノーバー国際見本市会場)や国内でも「MECT2023(メカトロテックジャパン2023)」(2023年10月18〜21日、ポートメッセなごや)で、2タレット2スピンドル式CNC複合旋盤の新製品「WY-100V」を披露する。従来機の「WY-100II」は海外におけるベストセラー機だ。
WY-100Vの英語で速度を意味するVelocityのVで、速さにこだわった製品だ。ターゲットワークではサイクルタイムを従来機比で30%短縮している。10%でも縮めば喜ばれるのに、30%というのはなかなか信じもらえないレベルだ。
既にニュースリリースやYouTubeでも公開しているが、あくまでも部分的な説明にとどめている。最後にそれぞれの展示会場で私が自らマイクを持って全貌を語る計画をしている。それだけ野心的な機械になっている。
MONOist YouTubeやX(旧Twitter)では中村氏自ら積極的に発信しています。その狙いとは。
中村氏 複合加工機の普及が1つの目的だ。どちらかというと玄人好みでハードルが高いという中村留への見方も変えていきたい。それも機械が好きな方に互いがパートナーとしてフラットな形で伝えたかった。自分たちの機械だけではなく、周辺機器や工具、治具などのメーカーともコラボレーションしながら技術者に伝わるような話の発信を続けている。
われわれは高い技術力があるのに、それが伝わらないもどかしさがあり、非常に悔しかった。私が説明して初めて「そんなものがあったんですか」と長年のユーザーから驚かれたこともあった。
今は自分たちのタイミングで、無料で投稿できるメディアがある。開発が終わった新製品の情報をすぐに投稿して、ニュースリリースと一緒に動画も公開できるようになった。今は動画を投稿すると、数時間後には見た方から問い合わせが来る。逆に社内から「なぜわれわれより先に知っているんですか。ちゃんと共有してください」といわれるほどだ。
社員は機械好きばかりで知見を豊富に持っている。エンジニアの能力もとても高い。それらをうまく言語化することができれば、もっと中村留のブランド価値は向上する。これからも活動を続けていきたい。
MONOist 工作機械のネットワーク化をはじめ生成AI(人工)の活用やAM(Additive Manufacturing、積層造形)など新しい技術をどう見ますか。
中村氏 よりユーザーに近い立場で提案していかなければならないのは事実だ。タイムリーなものも含めていろいろな取り組みがあるが、結局、それがユーザーに近いアプリケーションにならないと意味がない。難しい言葉を使うのはあまり好きではない。分かりやすい言葉、使いやすいアプリケーションにならないと、ユーザーのニーズに刺さらないし、作る意味がない。「現場の負担を削る」という言葉もまさにそうだ。現場の“これ”を解決するところまで落とし込み、その裏側ではそういうものが動いているというようにならなければユーザーに響かない。
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