まず製造業のビジネスモデルやオペレーションではデータ活用が重要となっている。「攻め」の観点ではデータを活用したソリューションビジネスやプラットフォームビジネスが広がってきていることなど、データが競争力の源泉となっていることは周知の事実だ。
自社の既存の領域を超えた展開が求められるようになってきている。トヨタ自動車によるWoven Cityの展開のように、MaaSやスマートシティー、産業メタバース、ソリューションビジネスなど領域の垣根を超えたデータ活用がますます求められている。
より競争力のあるソリューションを展開していく上では自社のみのデータでは限界があり、異業種や顧客/エンドユーザー、時には競合他社などとのデータ連携も欠かせなくなってくる。こうしたデジタルデータを活用したソリューション展開においても、データ共有を通じてデータの範囲を広げて競争力を構築していくことが求められる。
続いて、サプライチェーンに含まれる企業との設計や生産などでの密接な連携を通じてオペレーションの効率性や品質を向上させる「オペレーションの高度化」である。今までインダストリー4.0など製造業のデジタル化の文脈で議論されてきた方向性を、よりコネクター型のデータ共有圏(Data space)を通じて加速化させる動きである。
例えば顧客ニーズにもとづいて高効率にカスタマイズ製造を行うマスカスタマイゼーションにおいては、需要情報をサプライヤーにも伝達し、迅速にニーズに合わせた供給対応をしてもらう必要がある。サプライヤーとも密接にデータ連携することがマスカスタマイゼーションの実現につながる。
加えて、「守り」の観点でもデータ連携が重要となる。サプライチェーンにおけるCO2のモニタリングを行うScope3への対応に加えて、各種災害や半導体不足、ウクライナ危機などのサプライチェーンが分断するリスクや、サプライチェーンの人権や環境のSDGsの観点でのリスクにいかに迅速に対応するかが求められる。
さらに規制の観点では欧州電池規制も施行され、EV(電気自動車)向けバッテリーに関してライフサイクルの各段階でのCO2総排出量を検証し、独立した第三者検証機関による証明書などの提出が義務化される。ルール形成の観点ではバッテリーに限らず幅広い領域でデータ共有がNice to haveではなく、Must haveへと変化してきているのだ。
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