コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第7回のテーマは有名な分析フレームワーク、「アンゾフの成長マトリクス」の活用法だ。
Webマーケティング戦略を立てようと思っても、抽象的な内容になってしまい、実行手段とのひも付けができていないケースは非常に多い。今回は、一般的なフレームワークを活用することで情報を整理し、具体的な戦略を立てるための手法を紹介する。
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戦略立案する際にさまざまなフレームワークが存在するが、中でも汎用性の高いフレームワークとしてアンゾフの成長マトリクスがある。
縦軸に市場、横軸に製品(サービス)を置き、それぞれ「既存」「新規」の2区分に分けた、4象限の非常にシンプルなマトリクスだ。このマトリクスは、企業の成長戦略を多角的に考えるためのツールであり、経営戦略の検討に広く用いられている。
このフレームワークをサプライヤー企業に適用し、具体的な取り組み事例も含めた戦略立案の手法を紹介する。
まずは「既存市場×既存技術」の組み合わせから見ていこう。ここでは、既存の市場でどのように顧客を獲得するかを考える戦略で、既存事業を成長させることがテーマとなる。
今、自社が身を置く市場に対して、いかに自社の技術を広く認知させ、顧客を獲得するかを考える戦略だ。一般的なマーケティングでは市場浸透には多くの広告予算が必要となるため、比較的大手企業がとる戦略だが、Webマーケティングの領域では、広告ではなくSEO対策であればそこまで費用をかけずとも実施可能となる。
同戦略を採用した事例として、スパイラルベベルギアの製造などを手掛ける鳴滝工業有限会社を紹介する。歯車業界では後発だが、「ベベルギア」「スパイラルベベルギア」などの歯車系のキーワードで上位にランクインさせることで、認知度を向上させて問い合わせ獲得に成功している。もちろんユーザーのニーズにこたえられるだけの技術力は必要だが、市場に対し、自社が知られているかどうかだけでも仕事の流れは大きく変わる。
自社の技術を最大限生かせるターゲットや領域に絞り、訴求力を高め、ピンポイントで顧客を獲得する手法だ。
ここでは5軸加工機を主力とした少量多種の複雑形状、難削材を得意とする金属試作切削の有限会社ユニバーサルを紹介したい。自社の技術が生きる領域として研究開発部門にターゲットを絞り、難削材系のキーワードで対策をとることで、ピンポイントに引き合いを獲得する仕組みを構築している。ターゲットと提供価値を合致させる王道的な手法といえる。
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