動画1の時刻歴応答解析結果では、機械が前後に大きく揺れています。これは振動絶縁のために脚のばね定数を小さくしたからです。このような振動はX軸リニアアクチュエーターを急発進したときに生じます。
図2のXYステージの動作のX軸駆動の図では、Y軸リニアアクチュエーターとステージが移動しています。加工する部品の大きさにもよりますが、Y軸リニアアクチュエーターの質量は案外大きく、数十kgの場合もあります。
例えば、発進時の加速度が2[G](19.6[m/s2])だとすると、これにY軸リニアアクチュエーターとステージの質量を掛け算した力がY軸リニアアクチュエーターとステージに作用しますが、同時に同じ大きさの反力がX軸リニアアクチュエーターに発生します。この結果、動画1のような振動変位が発生します。
図4の囲みAで示した部分に注目してください。加工点がブルブルと震えていて、これが問題となります。機械が前後に大きく揺れていても加工点とステージの相対変位がなければ問題は生じません。加工点とステージの相対変位があると加工位置がずれることになり、精度不良品を生産することになります。
相対変位を調べるために図5のような解析モデルにします。加工する部分に密度ゼロのビームを付け加えます。そして、A点とB点の節点座標を一致させます。連載第1回ではビーム要素を使っていましたが、細い円柱を3D CADでモデリングしてもいいと思います。密度がゼロなのでこのビームが変形することはありません。また、このビームのヤング率は特に大きな値とする必要はありません。
A点(加工点側)とB点(ステージ側)の変位の時刻歴をテキストデータで出力して、「Excel」に取り込みます。グラフ化したものを図6左図に示します。A点とB点の変位のグラフはほぼ重なっています。A点とB点の変位差を図6右図に示します。ご覧の通り、A点とB点の差、つまり加工点とステージの相対変位は異なる周波数で無視できない量の振動となっています。
これは一例ですが、このような手順で問題となる振動変位を抽出します。シミュレーション結果をテキスト形式で出力するところがポイントです。
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