マテリアルリサイクルについてもチャレンジを続けている。通常のマテリアルリサイクルは回収⇒分別⇒粉砕⇒着色⇒造粒⇒成形と工程も多く、コストがかさむという難点がある。
同プロジェクトでは間の工程をスキップし、回収したランナーをそのまま粉砕し最短ルートで成形すること(回収⇒粉砕⇒成形)を目指し、豊富な経験や知見を有するパートナー企業と連携しながら実現に向けた取り組みを加速している。そして、このチャレンジを通じて「『エコは高いではなく、安い』と思われるようにしたい」と松橋氏は意気込む。
リサイクル事業は費用がかかり、バージン材に比べてコストが高くなりがちだ。そのため、採用する企業がなかなか広がらないという課題がある。そうした現状に対し、“ガンプラ生産40年”の歴史で培ってきたノウハウが重要な役割を果たすとし、接着剤不要の「スナップフィット」(材料の弾性を利用してはめ込むことにより固定する方式)や高度な成形技術などで課題解決を図っていくという。
そして、次なる課題は条件が毎回変わる粉砕材での安定生産だとし、「これを確立できればファンに製品を安価に提供できるなどメリットにもつながり、よりファンの参加意欲が湧くスキームとなり、少しでも早く循環型社会の実現に近づける」(松橋氏)。
将来的な運用のイメージとしては「普及する前のケミカルリサイクルはコストが高くなることを想定している。高くなると使われないため、現在チャレンジしているバージン材よりも安価に活用できるマテリアルリサイクルとバランスを取っていくことが重要だと考えている」(松橋氏)という。さらに、使用用途によった使い分けが明確にできるようになれば、生まれ変わったケミカルリサイクルの樹脂自体に価値が付加されるようになる。
また、サーマルリサイクルにおいてもパートナー企業と協力しながら、持続可能な電力の確保に活用されている。ただし、「せっかくのプラスチックを焼却してしまうのではなく、できる限り完全なプラスチックの循環を目指したい」(松橋氏)との考えを示す。
同プロジェクトの実現を支える重要なポイントとして、ファンの存在がある。同プロジェクトは“ファンが組み終わったランナーを回収ボックスまで運ぶ”というアクションからスタートする。「そのアクションの原動力となっているのはガンダムやガンプラが好きだ! というシンプルで強い思いであり、ファンが自分事としてアクションにつなげてくれている。企業とファンがつながり、ともに未来を創っていくことを目指す」(松橋氏)。
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