究極のガンプラ to ガンプラを目指し、BANDAI SPIRITSがファンとともに創る循環型社会CNTF 2023夏 講演レポート(1/3 ページ)

アイティメディア主催「カーボンニュートラルテクノロジーフェア 2023夏」のサステナブル設計ZONEの基調講演に登壇したBANDAI SPIRITS 松橋幸男氏による講演「ガンプラリサイクルプロジェクト 〜ファンとともに目指す循環型社会〜」の内容をダイジェストで紹介する。

» 2023年07月25日 09時00分 公開
[長町基MONOist]
BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン グローバルビジネス部 兼 クリエイション部 デピュティゼネラルマネージャーの松橋幸男氏 BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン グローバルビジネス部 兼 クリエイション部 デピュティゼネラルマネージャーの松橋幸男氏

 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパンの産業向けメディアを運営するアイティメディアは2023年6月6〜12日までの期間(オンデマンド配信は6月30日まで)、オンラインセミナー「カーボンニュートラルテクノロジーフェア 2023夏」(CNTF 2023夏)を開催した。

 本稿では、「サステナブル設計ZONE」の基調講演に登壇したBANDAI SPIRITS ホビーディビジョン グローバルビジネス部 兼 クリエイション部 デピュティゼネラルマネージャーの松橋幸男氏による講演「ガンプラリサイクルプロジェクト 〜ファンとともに目指す循環型社会〜」の内容をダイジェストで紹介する。

捨てられるランナーが再びガンプラへ、目指すは究極のガンプラ to ガンプラ

 2021年4月1日にスタートした「ガンプラリサイクルプロジェクト」は、ガンダムシリーズのプラモデル「ガンプラ」のランナー(プラモデルのパーツをつなぎとめる枠の部分)を全国から回収し、「マテリアルリサイクル」「サーマルリサイクル」「ケミカルリサイクル」へとつなげていくことを目指す取り組みだ。

 このプロジェクトは、バンダイナムコグループのパーパス(企業の社会的意義を追求した理念)「Fun for All into the Future」で掲げる「エンターテインメントの力/つながる/未来をともに創る」といったキーワード(メッセージ)に通じる活動となっている。

 ガンプラが完成したら役目が終わり、本来捨てるしかなったランナーを集めてリサイクルする――。この一連の流れを支えているのが「グループリソース」「パートナー」「ファン」の存在だという。

「ガンプラリサイクルプロジェクト」の流れ 「ガンプラリサイクルプロジェクト」の流れ[クリックで拡大] 出所:BANDAI SPIRITS|(c)創通・サンライズ

 ランナーの回収は、全国約200カ所のアミューズメント施設「namco」や公式ガンプラ総合施設「THE GUNDAM BASE(ガンダムベース)」に設置した回収ボックスで行う。回収ボックスにたまったランナーは店舗に商品を配達しに来たトラックの戻り便で運ぶため、物流に特別な負担が発生することを抑えている。これらはバンダイナムコグループのグループリソースを有効活用したスキームだといえる。

 そして、回収後のランナーは、BANDAI SPIRITSのプラモデル生産工場であるバンダイホビーセンター(静岡県)に輸送。同工場の製造工程で排出されるプラスチックと合わせて、一部をケミカルリサイクルの実現に向けた実証実験用の材料とし、残りをマテリアルリサイクルとサーマルリサイクル向けに活用する仕組みを構築した。

 プラモデルで主に用いられているポリスチレンを化学的に分解し、ポリスチレンの原料であるスチレンモノマーに戻す最先端技術であるケミカルリサイクルの実証実験は、関連技術を保有する同プロジェクトに賛同したパートナー企業と連携して取り組んでいる。この技術の実現により、使用済みのプラスチックを新品のプラスチックへ再生することが可能となるため、商品への幅広い利用ができ、再びガンプラとして新たなユーザーに届けられることになる。

 また、この一連のプロセスをガンプラファンにも紹介することで同調性が芽生え、ケミカルリサイクルを実現していこうという流れにつながっていく。「プロジェクトで掲げているのは『循環型社会の形成』だ。最終的には、遊び終わったガンプラを全く新しいガンプラに生まれ変わらせる、究極の“ガンプラ to ガンプラ”を実現したいと考えている。そうした新しい循環を可能にする技術がケミカルリサイクルだ。実現する日は少し先の未来になるが、1歩ずつ確実に歩みを進めている」(松橋氏)。

ケミカルリサイクル技術の確立により、究極の“ガンプラ to ガンプラ”の実現を目指す ケミカルリサイクル技術の確立により、究極の“ガンプラ to ガンプラ”の実現を目指す[クリックで拡大] 出所:BANDAI SPIRITS|(c)創通・サンライズ、(c)創通・サンライズ・MBS
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