NSKは、産業機械で使用される直動案内装置「NSK リニアガイド」の高作動化技術を開発したと発表した。
日本精工(NSK)は2023年6月29日、産業機械で使用される直動案内装置「NSK リニアガイド」の高作動化技術を開発したと発表した。同技術によりリニアガイドの局部摩擦変動により生じる誤差を抑え、より滑らかで高精度な検査装置、測定機の動きを実現する。同年8月から受注を開始し、同技術関連製品で2026年度に年間5億円の売上高を目指す。
リニアガイドは、レールとレール上を移動するスライダーで構成され、スライダーがレール上を滑らかに高精度に無限ストロークで移動することでさまざまな装置の動作を実現している技術である。滑らかに動く仕組みとして複数の金属球がスライダー内とレール設置面を循環して回る仕組みとしている(金属球タイプの場合)。
ただ、こうした仕組み上、垂直姿勢や壁掛け姿勢で設置した場合、重力の影響から循環する金属球間の間が詰まったり開いたりする部分が発生し、レールと接していない非負荷圏からレールに接する負荷圏に入る際に、局部摩擦変動によりボールがつまり、それが突発的であることから、位置決め誤差が発生する課題があったという。「検査機器や測定器、半導体/液晶パネル製造設備など、より高度な位置決め精度が要求されるようになっており、リニアガイドとしてもこれらの要求に応えていく必要がある」(NSK)。
NSKが新たに開発した「高作動メカニズム」は新たなリニアガイドの仕組みにより、金属球の移動差を低減し局部摩擦変動を発生させにくくする技術だ。具体的にはリニアガイドで循環する金属球の中に独自開発の弾性ボールを3つ入れることで、ボールの移動量差をこの弾性で吸収し、常に一定幅で金属球が動くことで、詰まりが発生しにくくする。「弾性ボールは、樹脂やゴムを使用したものだが詳細な話は伝えられない。ボールを3つ入れることで常に非負荷圏に弾性ボールがあるようにし、移動量差を吸収できるようにしている」(NSK)。
同技術により局部摩擦変動を抑え、作動特性が悪くなりやすい垂直姿勢や壁掛け姿勢などの取付姿勢にも効果を発揮する。また、従来のNSKのリニアガイド製品「NH/NS 型」と完全寸法互換のため設計変更を行うことなく置き換えることができる。「弾性ボールをリニアガイド内に入れる構造というのは、当社が調べた限りでは他にはないものだ」(NSK)としており、同技術の基本構成については特許登録済みだとしている。2023年8月から受注を開始し、2026年度には年間で5億円の販売目標を掲げている。価格については「通常品より5〜10%高くなる見通し」(NSK)としている。
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