協働ロボットを活用した自動化を進める企業が増える中で、人の力では扱うのが難しい重量物の搬送作業も協働ロボットに任せたいとの要望も現れてきました。具体的には重量物のパレタイジングや、搬送、加工機へのワークの脱着などです。
最近、より高い可搬重量と長いリーチを持つ協働ロボットが各社から発表されていることは朗報です。これからは、これらの協働ロボットが製造業の業務を変革し、多くの作業員の働き方をよりよいものにすることでしょう。
最近のIFR(国際ロボット連盟) World Robotics Reportによると、2021年の産業用ロボット設置台数は51万7385台と前年比31%増で史上最高を記録しました。全体として、2015年から2021年にかけて世界の年間ロボット設置台数は2倍以上になっています。2022年の成長は産業全体で鈍化しているようですが、これはパンデミックや電子部品の入手難に端を発した世界的な不透明感によるところが大きいと思われます。
協働ロボット市場については2023〜2026年までCAGR20%強の高成長を続け、2026年には市場規模が22億米ドル(約3000億円)を超えると予測されています※1。高成長の要因は、すでに協働ロボットの導入が進む自動車、電機電子業界に加え食品、飲料業界など新たな業種での導入が進み、多くのベンダーが参入して協働ロボットの認知が広がることなどです。
地域別にみると、従来は協働ロボットが誕生したヨーロッパから導入が進み、次いで北米、アジアに広がってきましたが、中国市場が急成長しており、2021年以降は世界市場における中国市場のシェアが50%を超えたようです。
欧州では自動車や金属加工業での採用が多い一方で、アジアではエレクトロニクスや新エネルギー分野での採用が多くなっています。北米では、協働ロボットの導入はさまざまな業種で比較的均等に進んでいるのが特徴です。。その中で比率が高い産業は自動車産業とサービス産業で、さらに、食品、飲料や化学薬品分野でも導入が進んでいます。
引き続き、協働ロボットを活用した自動化が上昇トレンドになると予想されます。なぜなら、世界中の企業が労働力とスキルの不足に直面している現在、人間がロボットと一緒に働くことで、より人間中心の持続可能で変化に強いビジネスが生まれる「インダストリー5.0」への移行の真っ只中であるためです。
※1:Interact Analysis 社、The Collaborative Robots 1H 2022 より
現場におけるロボットとのコラボレーションについてはよく話題になりますが、イノベーションの原動力となるのは“人と人のコラボレーション”です。
自動化を推進している企業は、自らのニーズを誰よりも理解しています。オートメーション市場の成熟に伴い、彼らはどういったソリューションが必要か、というニーズをこれまで以上に強く表明できるようになりました。これは、ロボットメーカーが製品開発段階で、よりエンドユーザーを巻き込めるようになったことを意味します。
ユニバーサルロボットが製品開発チームを再編成し、ソリューションの設計前にエンドユーザーが直面している課題を理解することに重点を置いているのは、このためです。また、ロボットメーカーと装置メーカーが共に特定のソリューションを開発する共同プロジェクトも、今後さらに増加することが予想されます。
重要なのは、自動化を進める企業が導入するソリューションのコンセプトや仕様に直接影響を与えることができるようになり、同時にロボットメーカーにとっても貴重なフィードバックが得られるため、業界全体の利益につながるソリューションを提供することができるようになるということです。
今後はこれまで以上に、企業は市場で存続、成長していくために絶えずイノベーションを起こし、変化に対応し続けなければなりません。2023年以降、ターンキーソリューションといった新たな手段で新境地を切り開くために、かつてないほどテクノロジーやイノベーションの力が必要になり、自動化は今後もますます進んでいくことが予想されます。
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