アクセンチュアが時価総額上位25社に入る企業も行うTERを解説、日本企業の課題とは製造マネジメントニュース(1/3 ページ)

アクセンチュアは「トータル・エンタープライズ・リインベンション(TER)」記者説明会を開催し、TERに基づいて高成長企業の特徴を紹介するとともに日本企業に必要な取り組みを提案した。

» 2023年06月09日 09時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 アクセンチュアは2023年6月8日、東京都内とオンラインで会見を開き、高成長企業の特徴と日本企業に必要な取り組みを解説する「トータル・エンタープライズ・リインベンション(TER)」記者説明会を開いた。

 TERは、同社が提唱する新たな発想の戦略で、新事業を創出し続けることで企業価値を持続的に高めるだけでなく、業界/社会変革のためのデジタルコアを中核に据え、飛躍的成長と経営最適化を実現することだという。

IT企業以外もTERを推進し時価総額上位25社にランクイン

 アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 ストラテジーグループ日本統括 兼 通信・メディアプラクティス日本統括 マネジング・ディレクターの廣瀬隆治氏が「2018〜2023年の5年間で不確実性が増している」と話すように、近年は社会情勢や経済、気候、消費者意識、地政学などが安定していない。

 こういった不確実性に対応して企業価値を高めるために、業界/社会変革に挑む再創造企業(リインベンター)は、企業/産業/社会の未来そのものを変革することが成果をもたらすという発想など6つの価値観を備え、TERを推進しているという。

再創造企業が持つ6つの価値観[クリックで拡大] 出所:アクセンチュア
再創造企業が持つ6つの価値観のレベルについて[クリックで拡大] 出所:アクセンチュア

 TERに取り組む再創造企業は、売上高成長率が変革途上企業と比べ10%高く、部分最適企業と比較し22%高い。全体のうち76%の再創造企業が、非財務指標を重要な成果として設定しており、特にサステナビリティに関する取り組みで成果を出している。

再創造企業の財務成果や非財務成果の比較[クリックで拡大] 出所:アクセンチュア

 過去5年間で時価総額上位25社に毎年ランクインしている14企業の中から、TERに取り組む再創造企業として米国のMicrosoft、Apple、Amazon、Alphabet、Meta Platforms、Walmartなどを紹介し、特に小売り大手であるWalmartのTERの取り組みに触れた。

過去5年間で時価総額上位25社に毎年ランクインしている14企業の中から、TERに取り組む再創造企業の取り組み[クリックで拡大] 出所:アクセンチュア

 Walmartは、AmazonなどのEC(電子商取引)サービスの勢いが増す中、店舗×デジタルの可能性にフォーカスし、顧客起点でリテール(小売店舗)の枠組みを超えビジネスを再構成した。変革の流れに関して、買い物の顧客体験(CX)を軸に、これまでのリテールを超え、金融、EC、ヘルスケアなどの事業を行った。

 例えば、金融事業でモバイル決済サービス「Walmart Pay」を、EC事業でサブスク型即日配送サービス「Walmart +」と他の小売店向けラストワンマイル配送プラットフォーム「Walmart GoLocal」を、ヘルスケア事業で診療所サービス「Walmart Health」を展開した。各事業では顧客のサービス利用により取得したデータを生かし、顧客価値創出のための取り組みへ投資している。

 変革実現のために、Walmart CEOのDoug McMillon(ダグ・マクミロン)氏は「イノベーションの先頭に立ち、デジタルの世界と実際の買い物を融合する」と2014年に宣言した。2019年には、設備投資に占めるIT/EC比率を68%(2014年は29%)に拡大し、Walmartが運営するスーパーマーケットで使えるアプリケーションで、消費者動態(決済やサービス利用データ)を顧客IDにひも付けデータ資産として蓄積した。

 さらに、IoT(モノのインターネット)による操業データのリアルタイムモニタリングや在庫の電子管理化、AI(人工知能)を用いた配送の最適化など、データを活用したオペレーションを徹底している。2016年には、EC、ヘルスケア、広告、デリバリー分野の企業を中心に21社を買収した。加えて、毎年数千人規模のIT人材を採用し、VRを使用した100万人規模の研修を行った。

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