さらに、下村氏はADAS/自動運転のためのソフトウェアを先に定義し、ハードウェア設計を行うSDVへの対応についても言及。ADAS/自動運転の実現において欧米が先行する中、「SDVへの対応が日本の自動車メーカーにとって大きな試練の1つになる。IT業界ではGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が台頭した際、日本企業はそこに打ち勝つ新しいイノベーションを生み出せずにいた。だが、SDVの領域には日本企業が世界に一石を投じるチャンスがあると考えている。そのためには、V字プロセスの右側でモノ(実機)ありきだった開発を、いかにシフトレフトできるかが重要となる」(下村氏)。
その際に、V字プロセスの右側からのシフトレフトを後押しするのがAnsysのソリューションとなる。Ansysは実機がなくてもソフトウェアベースで検証できる各種ソリューションを展開しており、「これらが全てつながっている」(下村氏)ことに、大きな強みを持つ。システムズエンジニアリング、3Dの物理シミュレーション、システム検証など、個々のプロセスにおけるツールを展開するベンダーは数多くいるが、ソフトウェア/ハードウェアの統合モデルベース開発を可能にするツールチェーンを有し、それらをワンストップで提供できる点がAnsysの最大の強みだという。
下村氏は、Ansysのソリューションを活用した自動車開発のイメージとして、雨や霧などの天候条件を含めた環境再現によるシミュレーション例や、カメラシミュレーションの動的効果の再現などを紹介。国内事例として、制御品質の向上に寄与したSUBARUのデジタルツインによる商品性早期検証環境構築に関する取り組みについても触れた。
同説明会では、下村氏に続けて、Ansys Regional Pre-Sales Support Principal Application EngineerのTushar Sambharam(トゥシャ・サムバラン)氏が「電動パワートレイン開発におけるMBSE(Model Based Systems Engineering)主導の設計」について解説した。
サムバラン氏は「AnsysではMBSEを非常に重要なアプローチだと位置付けている」と述べ、ソフトウェア/ハードウェアの開発で複雑な相互作用を伴い、いくつもの専門分野にまたがる階層的なシステムである電動パワートレインの開発においてMBSEの手法を導入する際、コンポーネントレベルから車両レベルまでの仮想検証で、Ansysのソリューションおよびパートナー企業のツールがどのように役立っているのかを説明。さらに、MBSEと仮想検証のアプローチが、自動車開発のV字プロセスにおけるシフトレフトに有効であることを訴えた。
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