リコーと東芝テックが複合機の開発生産を統合へ「QCDSEで最高の企業に育てる」製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

リコーと東芝テックは、両社の複合機などの開発生産に関わる事業を統合することで合意した。

» 2023年05月22日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 リコーと東芝テックは2023年5月19日、東京都内とオンラインで会見を開き、両社の複合機などの開発生産に関わる事業を統合することで合意したと発表した。2024年4〜6月をめどに、吸収分割方式で両社の事業を分割した上で、リコー子会社のリコーテクノロジーズに承継させ、事業統合後は合弁会社として出資比率をリコー85%、東芝テック15%とする計画だ。

会見の登壇者 会見の登壇者。左から、東芝テック 執行役員 ワークプレイス・ソリューション事業本部長の下川司郎氏、同社 代表取締役社長の錦織弘信氏、リコー 代表取締役 会長の山下良則氏、同社 代表取締役 社長執行役員の大山晃氏、コーポレート専務執行役員 リコーデジタルプロダクツビジネスユニット プレジデントの中田克典氏[クリックで拡大] 出所:リコー

 合弁会社を組成する目的は大まかに分けて2つある。1つは「オフィスプリンティング分野のモノづくりの競争力/事業基盤の強化」で、オフィス向けプリンティング機器の開発と生産に関する両社の技術的な強みを持ち寄り、企画と設計開発の機能の拡充を図る。また、部品や材料の共同購買、生産拠点の相互活用を進めるとともに、地政学リスクの高まりに柔軟に対応するレジリエントなサプライチェーンの構築を進め、より一層強いモノづくりの実現を目指す。さらに、使用済みの複合機を回収してリユース/リサイクルする取り組みでも効率化や高度化を図り、循環型社会の実現に貢献していく。

 合弁会社では、複合機のハードウェアとしての基盤となる共通エンジンの開発と生産を行う。この共通エンジンを用いた複合機ハードウェアに、リコーと東芝テックがそれぞれ独自に商品を差異化するためのコントローラーなどを搭載して供給した後は、両社がそれぞれの商流で販売するとともに、顧客のニーズを満たすサービスを提供していく。つまり、合弁会社は複合機ハードウェアの開発と生産を担うものの、販売/サービスの提供は両社が独自に展開する。現時点では販売/サービス分野における協業は検討していない。

合弁会社の概要 合弁会社の概要[クリックで拡大] 出所:リコー

 共通エンジンの開発はこれから両社でチームを編成して進めるため、開発期間は数年ほどかかり、2024年4〜6月の合弁会社の立ち上げには間に合わないとみられる。また、共通エンジンの開発コンセプトは「省エネ」「発熱の抑制」「使いやすい」「省フットプリント」などが挙がっており、リコーと東芝テック以外の企業への提供も積極的に進めたい考えだ。他社も魅力を感じる共通エンジンを作って採用を広げ、より多くの生産を行うことでさらなるコスト効率の向上を図る。

 合弁会社組成のもう1つの目的は「両社の技術/リソースを活用した新たな現場ソリューションの共同企画/開発」である。事業統合によって両社の保有するリソースをイノベーションの領域や個々の差異化領域により注力できるようにシフトし、競争力を高めて事業基盤の強化を図る。その上で、東芝テックが持つバーコードプリンタやRFIDなどを活用した自動認識技術と、リコーが持つカメラやプロジェクターなどの光学/画像処理技術を融合し、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する新たなソリューションの共同企画や開発にも取り組むとしている。

合弁会社で実現していくこと 合弁会社で実現していくこと。「オフィスプリンティング分野のモノづくりの競争力/事業基盤の強化」を進めた上で、「両社の技術/リソースを活用した新たな現場ソリューションの共同企画/開発」を実現し、このサイクルをスパイラルアップしていく[クリックで拡大] 出所:リコー

 ただし現時点で合弁会社に関する決定事項はそれほど多くない。合弁会社の資本金や、合弁会社に最適な形で両社の工場、人員を再編する方向性についてはこれから検討していくことになる。

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