トヨタのEV専任組織、BYD合弁に携わったトップの下で始動電動化(2/3 ページ)

» 2023年05月11日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

2023年度の見通し

 2024年3月期通期(2023年度)は売上高が前年度比2.3%増の38兆円、営業利益が同10.1%増の3兆円、当期利益が同5.2%増の2兆5800億円を見込む。過去最高の生産台数と販売台数で増収増益を目指す。通期の為替レートは1ドル=125円(2022年度実績より10円円高)、1ユーロ=135円(同6円円高)としている。

 半導体の供給改善や生産現場の努力、全地域で販売台数の増加を見込んでおり、トヨタ・レクサスブランドの生産台数を前年度比10.6%増の1010万台と計画する。半導体の供給リスクの可視化や代替品の検討、工場での稼働率向上に向けた改善を進めてきた結果、2023年3月以降は高水準の生産台数を継続しているという。これを受けて、2023年度通期の生産台数の見通しも高く設定した。生産が需要に追い付いていない状況も踏まえて、さらなる上積みに向けた取り組みを継続する。

2023年度の生産台数の見通し[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

 トヨタ自動車 副社長兼CFOの宮崎洋一氏は「1年前はどの半導体がいつ欠品するのかが全く見えていなかった。ある時期に突然部品を切らして生産台数を失うという状況が続いていた。そのリスクを可視化し、代替生産や設計変更を進めてきた。足元ではまだ完全ではないが、半導体の課題をマネジメントできるようになり、状況が改善してきたこともあって、1010万台という計画を示している」と見通しの根拠を述べた。

 社長の佐藤氏は国内生産の位置付けについて「台数というよりも、モノづくりを守っていく原点として位置付けをブレさせずに取り組んでいきたい。サプライチェーンをビジネスとして捉えるのではなく、強みをリスペクトした上で、ともにクルマづくりに取り組むパートナーとして付き合っていきたい。電動化で構成部品が変わっても、技術の要素1つ1つで見れば強い領域を持った仕入先がたくさんいる。われわれが作りたいクルマを早期に示し、ともに強い技術の生かし方を考えていきたい」とコメントした。

 2023年度の連結販売台数は前年度比8.8%増の960万台を計画している。トヨタ・レクサスブランドの販売のうち、電動車の販売は同34.9%増の384.3万台と見込む。電動車比率は37.0%だ。

 パワートレイン別の内訳は、HEV(ハイブリッド車)が同28.6%増の349.7万台、PHEV(プラグインハイブリッド車)が同55.6%増の13.7万台、EV(電気自動車)が同5.3倍の20.2万台となっている。EVは既存モデルの商品力向上や「bZ3」「レクサスRZ」によって販売を大幅に伸ばす。

1010万台に向けて[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

稼ぐ力と将来への投資

 2023年度の営業利益は、為替やスワップの影響を除くと前年度から8750億円増となる計画だ。資材高騰で5100億円、労務費や減価償却費など諸経費で2600億円といったマイナス要因があるものの、原価改善で3600億円、販売台数の増加や商品構成の改善など営業面の努力で1兆2850億円のプラスを生み出す。為替変動の影響は前年度と比べて8750億円のマイナス、スワップの評価益などその他は2750億円のプラスと見込む。

2023年度の営業利益の増減要因予測[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

 コロナ禍前の2019年度と比較すると、為替やスワップの影響を除く2023年度の営業利益は300億円のプラスを見込む。資材高騰の影響を原価改善や営業面の努力で吸収し、成長投資を増やす基盤が整ってきたとしている。2019年度と比べて資材は2兆7350億円の高騰、諸経費も9350億円増加しているが、原価改善で1兆850億円、営業面で2兆6150億円のプラスを生み出している。

コロナ禍前と比較した収益構造[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

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