インダストリー4.0に象徴されるデジタル技術を基盤としたデータによる変革は、製造業に大きな変化をもたらしつつある。本連載では、これらを土台とした「インダストリー5.0」の世界でもたらされる製造業の構造変化と取りうる戦略について解説してきた。最終回となる第5回では、今まで触れてきた製造業がプラットフォーム戦略を取る際の論点について整理する。
本連載では、「インダストリー5.0と製造業プラットフォーム戦略」をテーマに連載として、拙著『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)や『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社)、『メタ産業革命〜メタバース×デジタルツインがビジネスを変える〜』(日経BP/2022年10月20日出版)の内容なども踏まえ、これからの製造業が捉えるべき構造変化と、取りうる戦略について以下のような流れで解説している。
前回は、デジタル化による水平分業で日本の製造業が生かせる強みと、新たな競争力を担保する「製造業プラットフォーム戦略」について説明した。最終回となる第5回は、今まで触れてきた製造業がプラットフォーム戦略を取る際の論点について解説していく。
プラットフォームビジネスを検討するのに重要となるのが、直接GAMFA(Google、Apple、Microsoft、Facebook、Amazon.com)などのメガプラットフォーマーと正面から競合するのではなく、彼らとすみ分けるか連携することだ。資金力や自国市場規模、法制度などの制約が存在する日本企業として、想像を超えるスピードと規模で拡大、成長をするメガプレーヤーと正面からぶつかり合っても規模や投資力の勝負では、厳しいのは明らかだ。
そのため、大手プラットフォーマーと直接競合するのではなく、自社が先行者になれる領域で、セグメント化された「セグメンテッドプラットフォーム」としてすみ分けて展開する戦略が重要となる。大手プラットフォーマーも展開できる領域や、取り扱えるデータには限りがあり、全ての領域はカバーできない。そこでセグメント化されたプラットフォームを展開できる余地が生まれるのだ。大手企業としては全方位戦略をとっているケースが多く、特定のニッチ領域への投資やリソース投下をやり切れないケースが多い。そこを突くのだ。
メガプレーヤーとのすみ分け領域を定め、自社が競争力を保てる領域を、戦略的に展開していくことが必要だ。メガプレーヤーは世界規模での効率的な事業拡大を目指すため、個々の産業分野や地域などに最適なプラットフォームを展開できるとは限らない。ここに日本の製造業でも、プラットフォームを設計し参入して事業を展開できる可能性が存在する。自社がどのレイヤーであれば勝負できるのかを解像度を上げて、検討することが求められている。
現状、競争力の高いプレーヤーが存在したとしても、その上位/下位レイヤーや、視点の異なるポジションにホワイトスペースが生まれる。深く考えずに「自社はプラットフォーマーになれない」と思い込むのではなく、既存プラットフォーマーが展開している領域や地域を分析し、自社が先行者となれる領域を定義し、地域や領域、機能を掛け合わせることで、戦略を構築することが重要である。
メガプレーヤーとのすみ分けの「型」の例としては、以下のようなものが考えられる。
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