インダストリー5.0時代に生きる道、日本型プラットフォームビジネスの論点インダストリー5.0と製造業プラットフォーム戦略(5)(3/5 ページ)

» 2023年05月09日 07時30分 公開

協調領域の戦略的な見定めとエコシステム活用によるスケール

 プラットフォームビジネスにおいては、自社で差別化ができるコア領域に注力しつつ、エコシステムを活用して効率的にスケールしていけるかが重要となる。日本の製造業は自前志向が強いといわれてきたが、この「効率的にスケールする」という観点において、自社の資産、資源、顧客基盤、開発力が事業拡大の限界になってしまっているケースが多い。特に、アプリケーションの拡充やソリューション導入を提案するコンサルティング能力、システム統合を行う人的資源やノウハウ、能力が不足している。一方、先行企業では「他社と組んでいかに有効なエコシステムを形成するのか」に注力をしている。

photo 図4:産業向けプラットフォームにおけるエコシステム[クリックで拡大] 出所:筆者著書「日本型プラットフォームビジネス」より

 図4は主なB2B(企業向け)プラットフォームで形成されるエコシステムの分類である。それぞれを構成する主なプレーヤーは以下の通りだ。

  1. 需要者(ユーザー):プラットフォーマーとして価値を提供する対象
  2. コンサルティング/インテグレーションパートナー:ユーザーに対して導入支援を行ったり、サービスオペレーションの設計を行ったりする
  3. 接続ハードウェアパートナー:プラットフォームに対して接続するハードウェアを用意するパートナー。データの蓄積やネットワークに関する機器メーカーなどが対象
  4. テクノロジーパートナー:プラットフォームの機能をAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術などにより高度化する役割を果たす
  5. 提供者(サプライヤー):蓄積されたデータを基にユーザーにソリューションを提供する
  6. アプリ開発パートナー:データ活用を中心としたアプリケーションの開発を行う
  7. ノウハウパートナー:産業面での知見やノウハウ面で協力をする

 サービスの提供(サプライヤー)は、アプリ開発パートナーやノウハウパートナーと共同で行うこともある。IT開発力を持たない企業であっても、アプリケーションの構想や問題意識などがあれば、プラットフォームを介してアプリケーション展開をすることも可能だ。そこがエコシステムのポイントである。

 自社のリソースのみで顧客に対するビジネス提供を行う場合は、自社のリソースが提供できる範囲がビジネスの上限になってしまう。しかしエコシステムを効果的に活用することで、ビジネス拡大のスピードは何倍にもできる。例えば、米国のマイクロソフトでは、自社の収益に対してエコシステムが9倍もうかることを基準とし、エコシステムの構築に取り組んでいるという。「エコシステムを栄えさせれば結果として自社収益を得られる」という考え方が、いかに浸透し、重要視されているかが理解できるだろう。

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