一方、さまざまなゴム用添加剤を展開している同社のラインケミービジネスユニットでは、多様なステークホルダーと共同で、ベルギーのアントワープ港で大規模な蒸気/復水配管ネットワーク「ECLUSE(Energie Cluster linke Schelde、イクラス)」を2022年に構築した。ECLUSEは廃棄物を焼却することで蒸気を生成でき、これにより、ランクセスのベルギー工場で必要な熱エネルギーを獲得し、従来手法と比べCO2排出量を5分の1としている。
2023年1月には、ドイツとベルギーの拠点向けに、合計で毎時1400GWh(ギガワット時)分の電力の全量供給契約をフランスのENGIEと締結した。この電力の50%以上は風力と太陽光発電による再生可能エネルギー由来のグリーン電力で、原産地証明付きの企業向け電力購入契約(PPA)に基づき供給される。今回の契約期間は2023年1月〜2025年末だ。
ランクセス ラインケミー・ビジネスユニット日本および韓国統括マネジャーの渥美貴生氏は、「当社で販売している老化防止剤『Vulkanox(ブルカノックス)』の製造で、50%以上の持続可能な原材料の使用も目指している。このVulkanoxは、従来のアニリンに持続可能なアセトンを組み合わせることで、持続可能な原材料を50%以上使用したTMQ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)モノマーにより構築する。この構築方法はマスバランス方式と呼称されており、使用するに当たって国際持続可能性カーボン認証『ISCC PLUS』を取得する必要がある。そのため、ラインケミー・ビジネスユニットが老化防止剤を製造している生産工場(ドイツのブルンスビュッテル)の設備でISCC PLUS認証を2023年末までに取得する見込みだ」とコメントした。
また、ランクセスの無機顔料事業部では、同社の酸化鉄製品「BAYFERROX(ベイファロックス)」の赤、黄、黒といった代表的な色で環境製品宣言(EPD)認証を取得している。同社調べによれば合成酸化鉄メーカーでEPD認証を取得したのは世界だという。
EPD認証は、国際認証「ISO14025」と欧州規格「EN15804」に基づき、対象製品のライフサイクルアセスメント(原材料の入手から廃棄に至るまで)を評価し、顔料製品の環境負荷ポテンシャルを示せる。これにより、EPD認証を取得した顔料を塗布した製品のライフサイクルアセスメントを判断しやすくでき、環境に配慮した公共契約「グリーン公共調達」を受注しやすいという。
同社は、こういったさまざまな環境配慮により、「Science Based Targets イニシアチブ」により世界の平均気温の上昇を1.5度に抑制することに貢献すると認証され、EcoVadisのCSR評価サービスで上位1%のプラチナ評価も取得している。
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