――これ、装着すると耳から中空に浮いているような位置に固定されますよね。これも非常にユニークな点かと思いますが。
長谷川 これらの製品は、音を消すっていうコンセプトとともに、イヤフォンを着けても耳の穴を塞いでないように見せたい、っていうデザイン的な意図があったんですね。そうすることで相手に対しても、何か変な印象を与えずに済むし、話しかけられやすくなる。さらにより外音が取り込みやすくなるという効果もあります。
音響とパラレルで、まずは耳の穴をふさがない位置に置いて、どこまでできるかっていうところを突き詰めてきたんですね。ただ人によってかなり耳の形状が違うので、どうやってベストの位置を出すかというところは、結構難しかったところです。
――そのベストの位置は、どうやって決めたんでしょう。
長谷川 やはりそれはある程度、測定したりしています。点を打って、そこまでの距離を測ってというのを、オフィス内で人数を集めてやったり、あるいは日本人以外にも外国語学校の方にご協力いただいたりしました。その結果、今ツルが乗っている点から耳の穴までの距離というのが、比較的バラツキが少なかったんです。
そのため、一番サイズのバラツキが少ないポイントをベースにした方がいいだろうということで。ドライバの位置とそのポイントをつないで耳に乗っけるという、今のツルの構造が出来上がっています。また、昨今はメガネに加えてマスクといった耳に負担のかかる条件もあるので、それらと干渉しないように極力細くしようというところはありました。
――耳に固定するツルの構造が、かなりフィット感も良くて驚いたんです。ただこれ、初めてイヤフォンを作る会社の第1号製品でここまで完成度高くやれるものなのか、とも思ったのですが……。
長谷川:実は私達技術者は、大半が非NTT出身者でして。どこかしらでヘッドフォンやイヤフォンをずっとやってきた人間を中心にチームを組んでいるんです。
――nwm MBE001のケースデザインについてお伺いします。これはメガネケースを小さくしたような、平形の横に長いタイプですが、バッテリーがないんですね。背面のUSBポートにケーブルをさして、直接充電するようなスタイルになってます。こうしたケースも前例がないわけではないんですが、これもまたユニークな考え方ですよね。
長谷川 当初、私たちはそもそもキャリングケースはいらないんじゃないかと思ってたんですね。ご承知のようにオープン構造では、周りがすごいうるさいと音楽が聞こえなくなっちゃうんですよ。だから通勤とかには向いてなくて、どっちかっていうと家やオフィスなど特定の場所を中心に使うというユースケースがメインになるんじゃないかと思ってました。だからいわゆる「充電クレードル」でいいんじゃないかと。
ですが途中で、「いやちょっと待てよ」と。やっぱり蓋付きのケースあった方がいいんじゃないのかという話が出てまいりまして。正直、キャリングケースなしでクレードルのほうがとがっていていいんじゃないかと思いつつ、途中で急きょ変更したという経緯があります。
――なるほど。言われてみれば、バッテリーが入ってないのでクレードルだという見方もできますね。
長谷川 私たちの気持ちとしては蓋付きのクレードルなんです。イヤフォンをポンと置けば、勝手にマグネットで吸着して位置が決まると。ただキャリングケースって、9割9分電池が入ってるんですよね。ユーザーさんからも「何でバッテリー入ってないの」っていう声はかなりいただいてますので、今後その辺りは検討していく予定です。
――ただこのケース、イヤフォンが置きやすいし取り出しやすい。
長谷川 一般的なケースだと、イヤフォンの型に合わせて深い穴に挿入するものもありますが、表面がツルツルしてて取り出しにくいものもあるかと思うんですね。私たちも、取り出しにくいのは結構ストレスだよねってことで、取り出しやすさをユーザー体験として重視していて、ここは今後訴求していきたいと思っています。
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