2014年設立の三菱重工航空エンジンは現在、愛知県小牧市と長崎県長崎市の2拠点体制でMRO事業と、燃焼器や低圧タービンを中心とした航空エンジン部品の生産(新製)を行っている。
航空エンジン事業自体の淵源は、100年以上前の1920年の三菱内燃機製造 名古屋工場設立までさかのぼる。その後、長く防衛事業向けを手掛けていたが、1983年のV2500製造事業への参画を機に、民間航空エンジン事業をスタート。1993年にはPW4000エンジンのMRO事業を開始し、これまで900台を超える同型エンジンとそのモジュール(構成部品)の整備を実施してきた。
現在、航空産業はコロナ禍から急回復している。旅客需要を表すRPK(有償旅客km数)はコロナ禍前の8割程まで戻っており、さらに三菱重工航空エンジンが手掛けるV2500、PW1100G-JM搭載機などのASK(提供座席km数)はコロナ禍前を上回っている。同社の売上高としても、コロナ禍前の約1000億円がコロナ禍で半減したが、2022年度にはコロナ禍前を超えて史上最高益も視野に入っている。
特にMRO事業は今後も高い伸びが見込まれており、現状の部品製造6とMRO4という比率が数年以内に拮抗するまで成長し、全体の売上高も2000億円に達するとみている。新興国の経済成長などに伴い、世界の民間航空機も2041年までに倍増する予測もあり、需要は衰える兆しはない。
一方で、三菱スペースジェットの開発中止に関しては、もともと見込まれていた三菱重工航空エンジンにおける三菱スペースジェット関連の事業規模に占める割合は10〜20%前後とされ、開発中止によって需要の旺盛な整備事業などに能力を振り分けることができる面もあり、大きな痛手になっているわけではないという。
ただ牛田氏は「スペースジェットに使われるエンジンも、ここで組み立て、性能試験を行い、三菱航空機に収めるスキームになっていた。旅客機用エンジンを組み立て、最終性能試験まで行っているメーカーは世界に数えるほどしかない。その1つになることができると考えていたので、(開発中止は)残念な部分はある」と話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.