月面ローバー技術と超音波モーターで不整地でも長時間動くAMRを――Piezo Sonic:越智岳人の注目スタートアップ(7)(3/3 ページ)
「Mighty」のステアリング機構には同社の超音波モーター「ピエゾソニックモータ」が使用されている[クリックで拡大] ※撮影:筆者
Piezo Sonicは2022年に、EMS事業者である神田工業との資本業務提携を締結し、ピエゾソニックモータやMightyの量産化に向けた計画を着実に進めているところだ。
両社の出会いのきっかけは意外にもSNSだった。神田工業 代表取締役社長の高島一郎氏(「高」は正しくは「はしご高」)が多田氏のプロフィールをFacebook上で偶然発見。自社製品の製造を検討していた高島氏は、Piezo Sonicの超音波モーターやロボット技術に興味を持った。一方の多田氏も当時、量産パートナーを探していた。知財の集積であるモーターとロボットの量産を海外に委託するにはリスクが高く国内のEMSを検討していたが、適切な委託先が見つからない状況だった。
「Facebookがきっかけとなって、最初は雑談を交えたプライベートでの情報交換から始まり、次第にお互いが訪問し合うようになりました。提携の決め手になったのは両社のカルチャーが似ていたことです。私たちPiezo Sonicはコミュニケーションを丁寧に重ねながら、チームワークを尊重するスタンスです。一方の神田工業も社員の皆さんが温和で仲が良く、社員が一丸となって同じ方向を目指すことを大切にしている会社でした」(多田氏)
少数精鋭のスタートアップにとって、社員に求めるものは技術力だけでなく、行動力やコミュニケーション能力、周囲との調和など多岐にわたる。個々のパフォーマンスが周囲に及ぼす影響は大企業とは比にならないため、優れたスタートアップほど採用や提携には慎重だ。製造業は中長期的に緩やかな成長ストーリーを描きやすい一方で、Jカーブで急成長するストーリーの実現には量産化のめどと、そのストーリーに共感する投資家や事業会社からの出資が欠かせない。
今後はMightyの量産モデルの実現に向けた体制構築と並行して、外部からの資金調達も計画している。コア技術であるモーターと競争力のあるロボット、そして量産パートナーがそろった今、Piezo Sonicにとっての大一番を迎えようとしている。
今回取材に応じてくれたPiezo Sonic 代表の多田氏[クリックで拡大] ※撮影:筆者
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越智 岳人(おち がくと)
1978年生まれ。大学卒業後、複数のB2B業界でWebマーケティングに携わった後、2013年に株式会社メイテックでWebメディア「fabcross」を立ち上げる。サイト運営と並行して国内外のハードウェアスタートアップやメイカースペース事業者、サプライチェーン関係者との取材を重ねる。2017年に独立。フリーランスとして取材活動を続ける他、ハードウェアスタートアップを支援する事業者向けのマーケティング/コンサルティングや、企業、地方自治体などの新規事業開発やオープンイノベーション支援に携わる。2021年にシンツウシン株式会社を設立。
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