CO2排出量見える化アプリを無償提供、中小企業と共に脱炭素目指す山善脱炭素

山善はカーボンニュートラル実現に向けた同社の取り組みについて発表した。同社は製品仕入れ先である中小企業などを支援する形で、サプライチェーン全体でのCO2排出量低減を目指している。

» 2023年02月09日 10時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 山善は2023年2月1日、カーボンニュートラル実現に向けた同社の取り組みに関するオンライン発表会を開催した。同社は製品仕入れ先である中小企業などを支援する形で、サプライチェーン全体でのCO2排出量低減を目指している。

中小企業は脱炭素の必要性認識しつつも対応進まず

 国立環境研究所や経済産業省が公表した2017年度の国内CO2排出量データを参照すると、国内産業部門のCO2排出量は7.1億トンとされている。この内、中小企業による排出量は2割弱で、一定の割合を占めていることが分かる。一方で、日本貿易振興機構(JETRO)が実施したアンケートによると、カーボンニュートラル実現に「すでに取り組んでいる」とした大企業は39.2%だったが、中小企業では15.4%にとどまった。

 山善 執行役員 営業本部 グリーンリカバリー・ビジネス部長の松田慎二氏は「大企業に比べて中小企業の取り組みは遅れている。また商工組合中央金庫のアンケート調査を見ると、カーボンニュートラルを進めなければ自社に何らかの影響があると認識しているものの、具体的に何から取り組めば良いか分からない、という企業が大多数を占めているようだ」と指摘する。

中小サプライヤーへのPPA事業も展開

 山善のCO2排出量は「流通商社という企業の性質もあり、GHG(温室効果ガス)プロトコルにおけるスコープ1、2の排出量は極めて軽微」(松田氏)だという。CO2排出量の大半を占めるのが、スコープ3に該当する製品仕入れと製品使用に関わるものだという。山善は2030年までにCO2排出量を50%削減、2050年までにカーボンニュートラル達成を目標に掲げているが、それにはスコープ3の排出量削減に向けた取り組みが課題となる。

 そこで山善では「開発ビジネス」「販促企画」「ブランディング」の3領域を設定し、それぞれの取り組みを通じてスコープ3の排出量削減を図る。具体的な取り組みとして、まず開発ビジネスでは、エネルギーサービスを手掛けるDaigasエナジーと共同で行うPPAモデル事業「DayZpower(デイズパワー)」が挙げられる。仕入れ先企業の工場などの施設での太陽光発電の設備投資を山善が負担して、サプライヤーの再生可能エネルギー調達を支援する。

 販促企画では2008年から継続して「Green Ball Project(GBP)」に取り組んでいる。仕入れ先などへの環境優良機器の普及を通じてGHG排出量削減を目指すもので、参加企業数は累計で中小企業を中心に1万社に達する。これによってGHGプロトコルにおける「販売した製品の使用」(カテゴリー11)の排出量削減を目指す。

 また、GHGプロトコルに基づく山善独自の「GBPプロトコル」で算定したところ、プロジェクトを通じてこれまでに累計約49万トンのCO2削減貢献量を達成したという。削減貢献量とは省エネ性能を持つ機器を対象に、同等の能力を持つ機器と比較した際のエネルギー消費量の差分を集計したものである。

 さらに2022年には、GHGプロトコルとGBPプロトコルで併算した数値を集計し、排出量の見える化を実現する専用アプリケーションも開発した。電気代やガソリン代、通勤費や出張費などの経費データを入力するとスコープ1〜3の排出量を自動的に推定する。GBP参加企業に無償提供しており、これまでに400アカウントを発行した。

 松田氏は「グラフなど豊富な表現力で月次や年次のデータ比較、計画に対するGHG削減の進捗度を可視化できる。それらのデータはレポートとして出力でき、取引先などに環境報告書として提出することも可能だ。将来的には製品に使われる部品ごとのカーボンフットプリント算出や、カーボンプライシング、キャップアンドトレード制度に付随するカーボンクレジットのひも付けにも対応し、脱炭素の総合プラットフォームとして機能を拡充させていきたい。見える化支援を通じて、中小企業のGHG排出量の把握と脱炭素意識の向上を促していく」と説明した。

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