デンソーは、「第1回グリーンファクトリーEXPO」においてCO2の回収および循環技術、SOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell)技術、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)技術などを紹介した。
デンソーは、「第1回グリーンファクトリーEXPO」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)において、「カーボンニュートラル工場」をコンセプトに、CO2の回収および循環技術、SOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell)技術、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)技術などを紹介した。
デンソーは2030年長期方針の注力領域の1つとして環境分野を掲げており、「2035年の生産活動におけるカーボンニュートラルの実現」を目指し、自社工場内でもさまざまな取り組みを進めている。具体的には、工場の省エネ化に貢献する技術、電力のカーボンニュートラル化を推進する「つくる」「ためる」に関する技術、ガスのカーボンニュートラル化に関する「つくる」「もどす」技術などの開発や実証を進めている。
特徴的な取り組みの1つがCO2を循環させる仕組みだ。グリーンファクトリーEXPOでは、まずCO2を回収する仕組みとして、低濃度CO2を回収する「CO2回収システム」を展示した。高濃度のCO2を回収するシステムは既に重工系メーカーにより開発が進められているが、デンソーが狙っているのは、工業炉やオフィスなどから排出される濃度5%以下の低濃度CO2に特化している点だ。設置場所が多岐にわたることが想定されるため、エレベーターなどで搬送可能なコンパクト設計を目指している。「CO2の回収が容易になれば工場やオフィスなどでも資源として活用する発想が生まれてくる。2020年代後半に製品化することを計画している」(デンソー)。
こうして工場内で回収したCO2を水素と合成し、メタンを生成。このメタンを工場内のエネルギーとして再活用することで工場内で循環させることができる。このCO2循環システムは、2021年4月から安城製作所 電動開発センター内に設置した実証施設「CO2循環プラント」で実証実験を開始しており、現在さまざまな検証を行っているところだという。
都市ガスから取り出した水素を燃料として発電を行うSOFC(Solid Oxide Fuel Cell)も披露した。独自の燃料リサイクル技術で高効率な発電を実現し、電力会社が供給する電力を使用する際と比べ、31%のCO2排出量削減を実現。さらにカーボンニュートラル燃料の比率を高めて使うことで、最大で66%の削減まで可能だとしている。2024年度後半の製品化を計画している。「水素をすぐ利用しようとしても環境がない場合も多い。最初は都市ガスから水素を生成して発電し、環境が整い次第、水素の比率を高めることで徐々に移行できるようにする」(デンソー)と、現実的な水素活用のステップを訴えている。
合わせて、高温の水蒸気をセラミック製の電極で電気分解して水素を作るSOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell)についても紹介した。水は高温で電気分解するほど必要な電力が少なくなるため、低温で電気分解する場合と比較し、消費電力を約15%低減している。使用量に合わせて必要な台数を接続して使用する設計とし、高圧ガス法に該当しない設計により水素を利用する建物や設備に隣接した設置を可能とするなど、コンパクトで徐々に導入を広げられる製品を目指しているという。「CO2回収システム、SOFC、SOECにも全て共通しているのが、製品をコンパクトにして設置容易性を高め、後からの製品追加を容易にするという点だ。すぐにCO2を循環したり、水素を活用したりする環境はすぐには整わない。必要なところから徐々に広げていくという形になるはずだ。こうした動きに合わせた製品を目指している」(デンソー)。
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