ダイキン工業は、「環境対応型フッ素溶剤」「3Dプリンティング用フッ素樹脂PFA粉体」など、さまざまな用途で役立つフッ素化学製品の開発を進めている。
ダイキン工業は、「ネプコンジャパン 2023」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)内の「第24回 電子部品・材料 EXPO」に出展し、開発中の「環境対応型フッ素溶剤」「3Dプリンティング用フッ素樹脂PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)粉体」「透明圧電フィルム」「耐薬品性コーティング・封止材フッ素シーラント」といったフッ素化学製品を紹介した。
環境対応型フッ素溶剤は、従来の溶剤と比べて、低GWP(地球温暖化係数)でオゾン破壊係数がゼロと環境性能に優れる他、許容濃度が500ppmと低く人体への安全性が高い。不燃性で速乾性にも優れ、容易に取り扱える。用途としては、電子部品などの精密洗浄、軽質油とフッ素系化合物の洗浄などが想定されているだけでなく、潤滑剤溶媒と反応溶媒としての利用やヒートパイプおよびヒートポンプの作動液としての使用が見込まれており、上市は2023年の秋を予定している。
3Dプリンティング用フッ素樹脂PFA粉体は、3Dプリンティング「粉末床溶融結合法(PBF方式)」対応のフッ素樹脂で、PBF方式により金型不要で複雑な形状のモックや治具などを作れる。PBF方式とは、供給部から造形部へ粉体を供給し、レーザー照射により材料を溶融および結合させて立体の造形物を作る方法を指す。
ダイキン工業のブース担当者は、「PFAは、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン)、EP(エポキシ)などの樹脂より耐薬品性に優れるため、ガソリンやエタノールといった薬品に接触する機器のパーツなどを今回のPFA粉体で3Dプリンティングにより作れる。用途としては、半導体やメディカル機器、航空宇宙、自動車向け機器の試作品とパーツの作成を想定している」と話す。
透明圧電フィルムは、ディスプレイ内蔵センサーとウェアラブルセンサーに適した有機圧電フィルムで、90℃でも圧電性の変化を検知できるだけでなく、透明性も高い。競合品に比べて圧電耐熱性が高く、熱収縮率も低いという。用途としては、情報端末およびPCのHMI(ヒューマンマシンインタフェース)や自動車のナビタッチパネル、シートセンサー、耐衝撃センサーなどでの利用を想定している。
耐薬品性コーティング・封止材フッ素シーラントは、薬品や湿度に対して耐久性能を発揮する無溶剤コーティング材料で、さまざまなコーティング方法に対応し、溶剤浸漬後の体積変化も少なく、室温での硬化にも応じる。塗工性に関して、数μ〜数百μm幅の隙間を封止できる他、面で塗布することで数μ〜数百μmの保護層を形成し、端部には薄膜保護層を生成する。加えて、ニードルディスペンサー、ジェットディスペンサー、ダイコート、スピンコートでのコーティングに対応している。
用途としては、ディスプレイのエッジ部分に生じる隙間の封止材、ウェアラブルデバイスの内部部品の保護剤、パワー半導体とエレクトロウェッティング用絶縁膜、自動車ATF(オートマチックトランスミッションフルード)からの内部部材保護、低温シール(低温液状ガスケット)、精密離型用樹脂での利用を想定している。
こういった製品の開発を進めるのは、ダイキン工業の化学事業部で、化学事業部では、フッ素樹脂、防汚コーティング材、冷媒、フッ素ゴム、防水/防湿コーティング材、電池材料を中心に展開しており、2021年度連結売上高は2124億円で、海外売上比率は72%と、海外で製品が評価されている。なお、ネプコン ジャパンへの出展は今回が初だという。
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