ONCは、消費者の視点に立った報告書の公表後、以下の通り、研究者、アプリケーション開発者/データインテグレーター、医療機関のマルチステークホルダー視点に立った報告書を公表している。
ONCによると、各報告書とも、以下のような点に着目することによって、標準化されたAPIとヘルスケアアプリケーションに対する理解と利用を加速させるとしている。
上記の報告書のうち「科学的発見に向けて加速するAPI:アプリケーション開発者とデータイングレーターの視点」について見ると、以下のような構成となっている。
ここでは、開発者の視点から、以下の通り、APIやアプリケーションの採用と利用の現状に関するトピックを挙げている。
また、開発者ツールとリソースに関連して、さまざまな医療IT開発者との協働経験を基に、以下のような課題点を挙げている。
報告書は、医療IT開発者からのサポートの欠如と開発リソース(例:文書化、API、サンドボックスなど)の利用可能性が最低限にとどまっていることが、開発/検証プロセスの大きなボトルネックになっていると指摘している。また、APIが競合製品との接続に利用される可能性があることを、医療IT開発者が意識しているために、FHIR APIへのアクセスが難しい点も報告されているという。
このような障壁の存在は、アプリケーション開発者/データインテグレーターの間に、ジレンマを作り出している。図1は、現状を打破するために、一部の医療IT開発者が提供しているアプリケーション開発リソースへのアクセスやサンドボックスの検証のための階層例を示したものである。
図1 アプリケーション開発リソースへのアクセスの階層[クリックで拡大] 出所:Office of the National Coordinator for Health Information Technology (ONC) 「Accelerating Application Programming Interfaces for Scientific Discovery: App Developer and Data Integrator Perspectives」(2022年3月)基本的には無料アクセスを前提とするが、インテグレーター(例:検証/利用に対する課金)、認証済(例:パートナーシップに対する課金)、アプリケーションリスト掲載(例:ギャラリーリスト掲載に対する課金)といった階層別に設定された費用負担モデルを提示している。ただし、サードパーティーの資金提供者(例:ベンチャーファンド、補助金、顧客など)を確保していない限り、必要な資金を持っていないことが多い。従って、サードパーティーのアプリケーション開発者は、アプリケーションを開発し、保健医療システムのEHRに接続する前に、法的文書の作成やコンセント管理を先行しておく必要があるとしている。法的文書の例としては、データソース同意書、データ利用同意書、接続性同意書、パーソナライズ利用のための同意書、ITサポート同意書などを挙げている。
日本国内では、次世代医療基盤法に基づく匿名加工情報や仮名加工情報の取り扱いについて見直し作業が進んでいるが、米国と比較すると、アプリケーション開発者/データインテグレーターを後押しするようなビジネスモデルの開発が遅れている。「国家医療IT調整室(ONC)21世紀治療法最終規則」や「CMS相互運用性および患者アクセス最終規則」のようなデータ利活用に対するインセンティブ付与施策を有する米国との規制環境の差も大きい。
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