調査レポートの全文は180ページ以上にわたる文書となっており、5G-SDCの会員であれば入手できる。5G-SDCは、2022年度末までに2023年度以降も継続する形で会員申し込みした企業・団体の2022年度会費を免除するとしている。もちろん今回の調査レポート全文も入手できる。
会見では調査レポートの中から、2025年文献調査によって得た注目技術や標準化動向、近年の企業活動で課題となっている経済安全保障との関係性、国内外のローカル5Gのベンダー/ユーザーへのインタビューに基づくローカル5Gの普及に向けて解消すべき課題や有力なユースケース/利活用シーン、これらから分析/考察したローカル5G普及に向けてのロードマップを紹介した。
文献調査では、ローカル5Gの注目技術として、ソリューション/システムで「コア仮想化」「MEC(マルチアクセス・エッジ・コンピューティング)」「RANオープン化および仮想化」、ハードウェアで「Open RAN/vRAN」「RU端末ハードウェア」「インフラシェアリング」などが挙がった。
標準化動向では5G Evolutionと呼ばれる5Gの拡張規格を定めた「3GPP Rel.17」の実装が2023年以降に本格化すると想定。3GPP Rel.17で定められた、「RedCap」とも呼ばれるIoT(モノのインターネット)向けの規格「NR-Light」などが、2025年以降の産業用IoT向けローカル5G普及のトリガーとして期待されるという。また、経済安全保障との関係性では、特定重要物資、基幹インフラ、先端重要技術、機微技術の4つに分け、規制と自社の事業の関わりを想定して備えるべきとした。
ベンダー8社、ユーザー5社、業界団体など2社を対象に行ったインタビューでは、通信品質、5Gの特性、導入コスト/運用コストなどの観点からローカル5Gの普及に向けて解消すべき課題を挙げた。特にコストについては、2025年以降を想定する普及期のターゲット価格として、通信端末が4万〜6万円、オールインワン仕様基地局が40万〜50万円、初期導入コストや維持運用コストを含めた5年間総コストで1500万〜2000万円という数字を示した。また、ローカル5Gの普及期に向けて有力なユースケース/利活用シーンに求められる「スループット」「遅延」「信頼性」についても説明した。
分析/考察で示した、ローカル5G普及に向けてのロードマップでは、普及進展の条件となり得る要素である「マイルストーン」と、インパクトが大きく早期にクリアすべき「トリガー要素」を示した。小林氏は「コスト低減はもちろんのことながら、スイッチを入れたらすぐに使えるような簡便さなどによって、中小企業をはじめとする大企業以外への裾野への広がりが重要になるではないかと感じている」と指摘する。
なお、ローカル5Gの導入では、ミリ波の活用やWi-Fiとのすみ分けといった課題もある。まずミリ波については「ローカル5Gの多くのアプリケーションにとってミリ波で実現できる機能がオーバースペックなこともあり、通信範囲が広く確実に接続できる6GHz帯以下のサブ6での利用が中心になっている」(小林氏)。また、6GHz帯を用いるWi-Fi 6Eや次世代Wi-Fiとして開発が進むWi-Fi 7も登場するWi-Fiとのすみ分けについては「ローカル5GとWi-Fiのどちらかだけを使うというよりも、両方を組み合わせて使うという考え方が多いようだ。ローカル5Gは、AGV(無人搬送車)や作業者が装着するAR(拡張現実)グラスなど、移動体との通信に優れるという特徴もある」(同氏)という。
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